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マイホーム購入者必見!ハザードマップの正しい見方と3つの落とし穴

執筆者:松村保誠(宅建士・1級FP技能士・マンション管理士)

2026年6月20日

ハザードマップの正しい見方について解説する50代の男性 FP

マイホームの購入は、人生における大きな決断です。間取りやデザイン、駅からの距離など重視したい条件はたくさんありますが、近年特に注目が高まっているのが「自然災害への備え」ではないでしょうか。

毎年のように発生する大雨や台風のニュースを見るたびに、「自分が買おうとしているエリアは水害に強いのだろうか?」と不安に感じる方も多いはずです。そこで物件選びの必須ツールとなるのが「ハザードマップ」です。

しかし、「ハザードマップという言葉は知っているけれど、具体的にどうチェックすればいいかわからない」「色が塗られていない場所なら絶対に安全だと思っている」としたら、思わぬ落とし穴にはまってしまうかもしれません。

この記事では、これからマイホームを購入する方に向けて、ハザードマップの正しい見方と、確認時に見落としがちな「3つの注意点」を分かりやすく解説します。物件見学の段階でチェックすべきポイントや、万が一リスクエリアだった場合の考え方まで網羅していますので、後悔しない・安心できる家づくりの参考にしてください。

地震による「地盤リスク(液状化や揺れやすさなど)」の調べ方についてはコチラ。
契約後では手遅れ?マイホーム購入で後悔しない地盤リスクの調べ方

1. そもそもハザードマップとは?

ハザードマップってなんだろうと考える30代のご夫婦

ハザードマップ(災害予測図)とは、自然災害が発生した際に「どこに、どのような危険が、どの程度及ぶか」を予測し、その被害範囲や避難場所を地図上に視覚的にまとめたものです。

マイホームを購入する際、その土地が持つリスクを事前に把握するための最も基本となるツールと言えます。一言でハザードマップと言っても、災害の種類に応じていくつか種類が分かれています。

【マイホーム探しで確認すべき主なハザードマップ】

  • 洪水ハザードマップ:
    大雨によって大きな河川が増水し、堤防が決壊・氾濫した際の浸水リスクを表します。
  • 内水(ないすい)氾濫ハザードマップ:
    下水道や側溝の排水能力を超える局地的な大雨(ゲリラ豪雨など)が降り、市街地に水があふれるリスクを表します。大きな川から離れている場所でも発生するため、都市部では特に注意が必要です。
  • 土砂災害ハザードマップ:
    がけ崩れ、土石流、地すべりなどのリスクを表します。山の近くや、敷地内に高低差がある土地を検討する際に確認します。
  • 高潮・津波ハザードマップ:
    海沿いや、海抜の低い地域における浸水リスクを表します。

【ハザードマップの調べ方の基本】

物件探しの中でハザードマップを調べる際は、以下の2つのツールを使い分けるのが効果的です。

① 国土交通省「ハザードマップポータルサイト」

サイト内にある「重ねるハザードマップ」という機能を使えば、全国の地図上に洪水や土砂災害などのリスクを重ねて表示できます。複数のエリアで物件候補を探している段階で、広域のリスクを直感的に素早く確認するのに便利です。

② 各市区町村が発行している詳細なマップ(公式情報)

購入したい物件のエリアが具体的に絞れてきたら、必ず各自治体のホームページを確認しましょう。例えば「希望の自治体名+ハザードマップ」で検索すると、最新のPDFデータやWebマップを閲覧できます。

自治体によっては、より詳細な町名ごとのリスクを記載していたり、災害ごとに別々のマップを作成していたりします。不動産取引の実務においてもこちらのデータが基準となるため、最終的な確認は必ず自治体の公式情報をベースに行うのが鉄則です。

2. 不動産取引における「水害ハザードマップ」の扱い

市役所の防災・危機管理課で水害ハザードマップをもらう40代の男性

マイホームを購入する際、ハザードマップの存在は不動産取引のルール上でも非常に重要な位置付けとなっています。

実は2020年(令和2年)8月の宅地建物取引業法の改正により、不動産会社は買い手に対して、契約前の「重要事項説明(重説)」において、水害ハザードマップにおける物件の所在地を説明することが義務化されました。

具体的には、対象となる物件が「洪水」「内水(ないすい)」「高潮」の3つの水害ハザードマップ上でどの位置にあるのかを、不動産会社の担当者(宅地建物取引士)が地図を示しながら買主に説明しなければなりません。これにより、買い手は「知らされないまま水害リスクのある土地を買ってしまった」という事態を防ぐことができるようになりました。

【実務における最大の注意点:「契約当日」に知っても遅い】

法律で義務化されたことは買い手にとって大きなプラスですが、実務上、ここに大きな落とし穴が潜んでいます。

それは、重要事項説明が行われるタイミングです。多くの場合、重要事項説明は「売買契約を結ぶ当日、契約書にハンコを押す直前」に行われます。

つまり、もしその土地に高い水害リスクがあったとしても、買主がその事実を不動産会社から公式に告げられるのは「もう買う気満々で、手付金も用意して契約の席に座っているタイミング」なのです。

その場で「実はこの物件、3メートル浸水するエリアに入っていまして…」と言われても、心理的に契約を白紙に戻すのは非常に困難です。また、すでに住宅ローンの事前審査などを進めていた場合、費やした時間や労力も無駄になってしまいます。

【買い手が取るべき行動】

だからこそ、不動産会社からの説明をただ受け身で待っているのは危険です。

マイホーム探しにおいては、「物件見学(内見)に行く前」あるいは「購入申込み(買付)を入れる前」の段階で、必ずご自身でハザードマップをチェックする習慣をつけてください。

事前にリスクを把握した上で、「このエリアは少し浸水リスクがあるから、建物の基礎が高い物件に絞ろう」といった冷静な判断基準を持つことが、後悔しない家づくりの第一歩となります。

3. 危険!ハザードマップ確認時の「3つの落とし穴」

水害ハザードマップで購入を検討している不動産について、浸水想定区域内かどうかを確認している30代の男性

ご自身でハザードマップを確認する際、見方を少し間違えると、思わぬリスクを見落としてしまう可能性があります。ここでは、マイホーム探しで陥りがちな「3つの落とし穴」について解説します。

落とし穴①:「色が塗られていない=絶対安全」ではない

ハザードマップを見て、自分の検討しているエリアに色が塗られていない(浸水想定区域外である)と、ホッと胸をなでおろす方は多いでしょう。しかし、「色が塗られていない=水害が絶対に起きない安全な場所」と考えるのは非常に危険です。

なぜなら、ハザードマップはあくまで「特定の条件(想定される最大規模の降雨など)に基づいてシミュレーションした結果」に過ぎないからです。近年のように「観測史上最大」を更新するような想定外の豪雨が発生した場合、色が塗られていない場所でも被害が起きることは珍しくありません。

また、大きな河川はマップの対象になっていても、住宅街を流れる「小さな川や用水路」はシミュレーションの対象外となっていることもあります。マップが真っ白でも決して過信せず、「想定外は起こり得る」という意識を持っておくことが大切です。

落とし穴②:「過去の浸水履歴」を見落としている

ハザードマップが未来の「予測図」だとすれば、それと同時に必ず確認しておきたいのが過去の「実績」です。

各自治体のホームページや窓口では、過去に実際に浸水被害があった場所を記録した「浸水実績図(履歴図)」が公開されていることが多くあります。

ハザードマップのシミュレーション上は安全なエリアでも、過去の履歴を調べると「実は台風のたびに道路が冠水しやすい地域だった」「過去にゲリラ豪雨で床下浸水が起きていた」といった土地のリアルな弱点が浮かび上がることがあります。予測図(ハザードマップ)と過去のデータ(浸水履歴)の「両輪」で確認することで、リスク調査の精度は格段に上がります。

落とし穴③:物件周辺の「高低差」と「避難経路」を確認していない

物件そのものの場所だけをピンポイントで確認して満足してしまうのも、よくある落とし穴です。

たとえ購入予定の家が少し高い場所にあり、浸水リスクがゼロだったとしても、周囲の道路や駅までの道が低くなっていればどうなるでしょうか?

大雨の際、家は無事でも周囲の道路が冠水してしまい、買い物に行けない、車を出せない、といった「孤立状態」に陥るリスクがあります。

また、指定されている避難所までのルートが低いアンダーパス(ガード下)を通る経路だったりすると、いざという時に安全に避難できません。

マップでの机上確認だけでなく、実際に現地周辺を歩いてみて、道路の「高低差」や「避難所までの道のり」を自分の目と足で確かめることが非常に重要です。

4. もし希望の物件が「ハザードエリア」に入っていたら?

水害対策の一環として建物の基礎を50cm ほど高くしてほしいと建築士に申し出る30代の男性

立地や価格、間取りなどすべての条件が理想的でも、いざハザードマップを確認したら「浸水想定エリア(色が塗られている場所)」だった……。そんな時、「色が塗られているから絶対に買ってはいけない」と即座に諦める必要はありません。

大切なのは、そのリスクの「深さ(程度)」を正しく把握し、適切な対策が取れるかどうかを冷静に判断することです。

リスクの大きさを「浸水深」で評価する

ハザードマップでは、浸水する深さ(浸水深)によって色が分けられています。同じエリアに入っていても、リスクの大きさは全く異なります。

  • 浸水深 0.5m未満(目安:大人の膝下・床下浸水レベル):
    比較的被害は抑えやすく、建物への致命的なダメージは防ぎやすいと言えます。
  • 浸水深 0.5m〜3.0m未満(目安:1階の床から天井まで):
    家財道具や家電が水没するリスクが高くなります。早めの避難行動が求められます。
  • 浸水深 3.0m以上(目安:2階まで水没):
    命に関わる危険なレベルです。このエリアでの購入は、慎重の上にも慎重を期す必要があります。

まずは「何メートルの浸水が想定されているのか」を正確に読み取りましょう。

建築的な「対策」でリスクを軽減する

これから家を建築する場合(注文住宅など)や、リノベーションを行う場合は、設計の工夫で水害リスクを軽減することが可能です。

  • 基礎を高くする:
    周辺の地盤より建物の基礎(土台)を高く設計し、床下・床上浸水を防ぎます。
  • 設備機器を高所に配置する:
    エアコンの室外機や給湯器(エコキュートなど)などの高額な設備を、水没しないよう高めの架台に設置します。
  • コンセントの位置を上げる:
    1階のコンセント類を通常より高い位置に設置することで、万が一浸水した際の漏電やショートを防ぎます。

資金計画に「水災補償」のコストを組み込む

ハザードエリアでマイホームを購入するなら、火災保険において「水災補償」を必ず付帯させましょう。

ここで注意したいのが、ランニングコスト(維持費)です。近年、火災保険の制度改定により、水害リスクが高いエリアほど「水災補償の保険料が高くなる」仕組みが導入され始めています。

物件価格そのものが安かったとしても、将来にわたって支払う保険料が割高になれば、トータルの出費は大きくなります。購入前の資金計画の段階で、住宅ローンの返済額だけでなく「水災補償を含めた火災保険料の概算」もしっかりと予算に組み込んでおくことが重要です。

まとめ:ハザードマップは「リスクをゼロにするため」ではなく「正しく備えるため」のツール

ハザードマップはリスクをゼロにするためのものではなく、リスクに正しく備えるためのものであることを力強く主張する40代の女性 FP

いかがでしたでしょうか。マイホーム購入におけるハザードマップの正しい見方と、注意すべきポイントについて解説しました。

後悔しない物件選びのために、今回お伝えした重要なポイントを振り返ります。

  1. 契約当日の重要事項説明を待たず、物件見学の前に自分で調べる
  2. 「色が塗られていない=絶対安全」と過信しない
  3. 予測図だけでなく、過去の「浸水履歴」や周辺の「高低差・避難経路」もセットで確認する
  4. もしハザードエリアでも、浸水深を正しく把握し「建築的な対策」と「水災補償」で備える

日本において、自然災害のリスクが「完全にゼロ」の土地を見つけることは非常に困難です。ハザードマップを見て不安になるお気持ちはとてもよく分かりますが、このマップの本来の目的は、危険な場所をむやみに避けることだけではありません。

その土地が持つリスクの正体を正しく知り、いざという時のために「どう備えるべきか」を考えるためのツールなのです。

「知らずに買って後悔する」ことのないよう、ぜひ今回ご紹介したチェックポイントを活用していただき、ご家族が安心して長く暮らせる理想のマイホーム探しに役立ててください。

災害リスクとは別の点で購入を控えるべき土地の特徴についてはコチラ。
【プロが警告】絶対に買ってはいけない土地の条件12選!後悔しない見極め方を徹底解説

執筆者:松村保誠
宅建士・1級FP技能士・マンション管理士
宅建士3200名超を指導、不動産関連著書9冊