住宅ローンが残っていても家は売れる!仕組み・手順・注意点を徹底解説
執筆者:松村保誠(宅建士・1級FP技能士・マンション管理士)
2026年6月26日

「住宅ローンがまだ残っているけど、この家を売ることはできるのだろうか?」
転勤や離婚、家族構成の変化、あるいは住み替えを検討するなかで、こんな疑問を持つ方は少なくありません。ローンが残ったままでは売れないのでは、と不安に感じている方もいるかもしれません。
結論からお伝えすると、住宅ローンが残っていても家を売ることは可能です。
ただし、通常の売却とは異なる手続きや条件があり、状況によって対応方法も変わってきます。何も知らないまま進めてしまうと、思わぬトラブルや損失につながることもあります。
この記事では、ローンが残っている家を売る際の仕組みや手順、注意点をわかりやすく解説します。「自分のケースではどう対応すればいいのか」がイメージできるよう、具体的な状況別の対処法もあわせてご紹介します。まずは基本的な仕組みから確認していきましょう。
住宅ローンが残っていても、家を売ることは可能です

「ローンが残っている=家を売れない」と思われがちですが、それは誤解です。日本では住宅ローンを抱えたまま不動産を売却するケースは珍しくなく、毎年多くの方が実際に売却を成立させています。
ただし、ひとつだけ絶対に外せない条件があります。それが**「抵当権の抹消」**です。
抵当権とは何か
住宅ローンを借りると、金融機関は担保として購入した不動産に「抵当権」を設定します。抵当権とは、借り手がローンを返済できなくなった場合に、金融機関がその不動産を競売にかけて債権を回収できる権利のことです。
つまり、抵当権が設定されたままの不動産は、いわば「金融機関が持つ権利が残った状態」にあります。この状態では、買主は安心して購入できないため、売却するには必ず抵当権を抹消しなければなりません。
抵当権を抹消するには「ローンの完済」が必要
抵当権を抹消する方法は、原則として住宅ローンを完済することです。売却の流れとしては、
- 家を売却して売却代金を受け取る
- その代金でローンを一括返済する
- 返済と同時に抵当権が抹消される
- 買主へ所有権が移転する
という手順を、通常は決済日に同日で一括処理します。つまり「完済してから売る」のではなく、「売却と完済を同時に行う」のが一般的です。これがローン残債ありの売却における基本的な仕組みです。
ただし、売却金額とローン残債の関係によって、その後の対応が変わってきます。次のセクションで詳しく見ていきましょう。
ローンが残った家を売る2つのケース

ローンが残った状態で家を売る場合、まず確認すべきことがあります。それは**「売却予想額」と「ローン残債」のどちらが大きいか**です。この関係によって、売却の難易度や対応方法が大きく変わります。
ケース1:売却額がローン残債を上回る場合(アンダーローン)
売却予想額がローン残債を上回っている状態を**「アンダーローン」**と呼びます。
たとえば、ローン残債が2,000万円の家が2,500万円で売れた場合、売却代金からローンを完済しても500万円が手元に残ります(諸費用を除く)。この場合、売却のハードルは比較的低く、通常の不動産売却とほぼ同じ流れで進められます。
購入からある程度の年数が経過していてローン残債が減っている場合や、購入時より不動産価値が上がっているエリアでは、アンダーローンになるケースが多いです。
ケース2:売却額がローン残債を下回る場合(オーバーローン)
一方、売却予想額がローン残債を下回っている状態を**「オーバーローン」**と呼びます。
たとえば、ローン残債が2,500万円残っているのに、家が2,000万円でしか売れない場合、売却代金だけではローンを完済できず、500万円が不足します。この場合、抵当権を抹消するためには不足分を別の方法で用意する必要があります。
オーバーローンになりやすいのは、購入後まもない時期(ローン残債がまだ多い時期)や、不動産価格が下落したエリアなどです。
対処法については後のセクションで詳しく解説しますが、自己資金で補填する、住み替えローンを活用する、任意売却を検討するなどの選択肢があります。
まず自分がどちらのケースかを確認しよう
| アンダーローン | オーバーローン | |
| 関係 | 売却額 > ローン残債 | 売却額 < ローン残債 |
| 売却のしやすさ | 比較的スムーズ | 対策が必要 |
| 手元に残るお金 | プラスになる可能性あり | 自己資金の持ち出しが必要な場合も |
自分がどちらのケースに当てはまるかを知るためには、①ローン残債の確認と②不動産の査定の2つが出発点になります。次のセクションでは、実際の売却の手順をステップごとに解説します。
ローンが残った家を売る手順

ローンが残っている家を売る流れは、基本的には通常の不動産売却と大きく変わりません。ただし、金融機関とのやり取りや、残債確認・抵当権抹消といった独自のステップが加わります。全体の流れを把握しておくことで、スムーズに手続きを進めることができます。
STEP 1:ローン残債を確認する
まず、現在の住宅ローン残債がいくらあるかを正確に把握します。確認方法は以下のとおりです。
- 金融機関から送られてくる「返済予定表」や「残高証明書」を確認する
- 金融機関のウェブサイトやアプリのマイページで確認する
- 金融機関の窓口や電話で問い合わせる
残債の確認は売却計画の出発点となるため、最初に必ず行いましょう。
STEP 2:不動産の査定を依頼する
次に、売却予想額を把握するために不動産会社に査定を依頼します。査定額とローン残債を比較することで、アンダーローンかオーバーローンかが判断できます。
査定には**「簡易査定(机上査定)」と「訪問査定」**の2種類があります。より精度の高い売却予想額を知るためには、実際に物件を見てもらう訪問査定が望ましいです。また、複数の不動産会社に査定を依頼することで、相場観をより正確につかむことができます。
STEP 3:アンダーローン/オーバーローンを判断する
査定額とローン残債を比較し、どちらのケースに該当するかを確認します。
- アンダーローンの場合:通常の売却手続きに進む
- オーバーローンの場合:自己資金での補填や任意売却など、対応策を検討する(詳しくは次のセクションで解説)
STEP 4:金融機関に売却の意向を伝える
売却を進める前に、必ず住宅ローンを借りている金融機関に連絡を入れましょう。金融機関への連絡なしに売却を進めることはトラブルの原因になります。
このタイミングで、一括返済に必要な手続きや手数料、抵当権抹消に必要な書類などについて確認しておくとスムーズです。
STEP 5:売却活動・買主との契約
不動産会社と媒介契約を結び、売却活動を開始します。買主が見つかったら、売買契約を締結します。このとき、契約書には引渡し日(決済日)が明記されます。
売却活動中も、ローンの返済は通常どおり続けることになる点を念頭に置いておきましょう。
STEP 6:決済・ローン一括返済・抵当権抹消・所有権移転
売却における最大の山場が、この決済日です。通常、以下のすべてが同じ日に同時進行で行われます。
- 買主から売却代金を受け取る
- 受け取った代金で住宅ローンを一括返済する
- 金融機関が抵当権抹消の手続きを行う
- 所有権が買主へ移転する
司法書士が同席のもと、金融機関・売主・買主・不動産会社が一堂に会して手続きを進めるのが一般的です。この日をもって売却が完了します。
売却の流れ:全体イメージ
| ステップ | 内容 | 目安期間 |
| STEP 1 | ローン残債の確認 | 数日 |
| STEP 2 | 不動産査定の依頼 | 1〜2週間 |
| STEP 3 | アンダー/オーバーの判断 | 即日 |
| STEP 4 | 金融機関への連絡 | 数日 |
| STEP 5 | 売却活動・売買契約 | 1〜6ヶ月程度 |
| STEP 6 | 決済・抵当権抹消・引渡し | 契約から1〜2ヶ月 |
売却活動の期間は物件の状況や市場環境によって大きく異なりますが、全体としては売却開始から完了まで3〜8ヶ月程度を見込んでおくとよいでしょう。
売却額がローン残債より少ない場合の対処法

査定額がローン残債を下回るオーバーローンの状態でも、売却の手段がないわけではありません。状況に応じていくつかの選択肢があります。それぞれのメリット・デメリットをしっかり理解したうえで、自分に合った方法を選ぶことが大切です。
対処法①:自己資金で不足分を補う
最もシンプルな方法は、売却代金でまかなえない不足分を貯蓄などの自己資金で補填することです。
たとえばローン残債が2,500万円で売却額が2,000万円であれば、500万円を自己資金から用意してローンを完済し、抵当権を抹消します。
メリット
- 手続きがシンプルで、通常の売却とほぼ同じ流れで進められる
- 信用情報に傷がつかない
デメリット
- まとまった自己資金が必要
- 不足額が大きい場合は現実的でないことも
対処法②:住み替えローン(買い替えローン)を活用する
住み替えを前提としている場合、新居の購入ローンに現在のローン残債の不足分を上乗せして借りる「住み替えローン(買い替えローン)」という方法があります。
たとえば、ローン残債の不足分が500万円で、新居の購入価格が3,000万円であれば、合計3,500万円を新たなローンとして借り入れる形になります。
メリット
- 自己資金がなくても住み替えが実現できる
- 売却と購入を同時に進められる
デメリット
- 借入額が大きくなるため、月々の返済負担が増す
- 金融機関の審査が通常より厳しい
- すべての金融機関が取り扱っているわけではない
対処法③:任意売却を検討する
自己資金もなく、住み替えローンも利用できない場合の選択肢として**「任意売却」**があります。
任意売却とは、ローンの返済が困難になった際に、金融機関の同意を得たうえで市場価格に近い価格で不動産を売却する方法です。通常、ローンを完済できなければ抵当権を抹消できませんが、任意売却では金融機関と交渉することで、残債が残った状態でも売却を認めてもらうことができます。
メリット
- 競売に比べて市場価格に近い価格で売却できる
- 引越し費用を売却代金から捻出できる場合がある
- 競売のように強制執行されるわけではなく、ある程度のスケジュール調整が可能
デメリット
- 信用情報に傷がつき、一定期間ローンが組めなくなる
- 金融機関の同意が必要で、必ずしも認められるとは限らない
- 売却後も残債が残る場合があり、返済交渉が必要になることがある
- 悪質な業者も存在するため、信頼できる不動産会社を選ぶことが非常に重要
任意売却の詳細についてはコチラ。
任意売却とは|競売との違い・流れ・悪質業者の見極め方まで徹底解説
任意売却と競売の違い
任意売却を検討する際に知っておきたいのが、「競売」との違いです。住宅ローンの返済を長期間滞納すると、金融機関は裁判所に申し立てを行い、不動産が強制的に競売にかけられます。
| 任意売却 | 競売 | |
| 売却価格 | 市場価格に近い | 市場価格の6〜7割程度になることが多い |
| 手続きの主導権 | 売主(金融機関の同意のもと) | 裁判所・金融機関 |
| プライバシー | 比較的守られる | 競売情報が公開される |
| 引越し時期 | ある程度調整可能 | 強制退去になる場合も |
| 残債 | 交渉次第で減額できる場合も | 残債がそのまま残ることが多い |
返済が厳しくなってきた場合は、競売になる前に早めに金融機関や専門家に相談することが重要です。競売の手続きが始まってしまうと、任意売却できる期間が限られてしまいます。
どの方法を選ぶべきか
| 状況 | おすすめの対処法 |
| 不足額が少なく、貯蓄がある | 自己資金で補填 |
| 新居への住み替えを予定している | 住み替えローン |
| 自己資金がなく、返済も困難 | 任意売却 |
オーバーローンだからといってすぐに諦める必要はありません。まずはローン残債と査定額の差額を把握し、自分の状況に合った対処法を専門家に相談しながら検討することが大切です。
こんな場合はどうする?

住宅ローンが残った状態での売却は、置かれている状況によって対応方法や注意点が異なります。よくあるケースごとに、ポイントを整理します。
ケース①:離婚して家を売りたい場合
離婚に伴う不動産売却は、財産分与や名義の問題が絡むため、特に注意が必要です。
確認すべきポイント
まず確認すべきは、不動産の名義とローンの名義が誰になっているかです。名義のパターンによって手続きが変わります。
| パターン | 内容 |
| 単独名義・単独債務 | 名義人がローンを抱えたまま売却。比較的シンプル |
| 共有名義・連帯債務 | 両者の同意がなければ売却できない |
| 単独名義・連帯保証人あり | 連帯保証人にも影響が及ぶ |
特に注意が必要なのが、共有名義や連帯債務のケースです。離婚後に一方が「売りたい」と思っても、もう一方が同意しなければ売却を進めることができません。また、離婚後も片方がローンを払い続けるケース(例:夫名義の家に妻子が住み続けるなど)は、将来的に返済が滞るリスクもあるため、できるだけ売却や名義変更などで整理しておくことが望ましいです。
財産分与や名義変更を伴う場合は、不動産会社だけでなく弁護士や司法書士への相談も検討しましょう。
ケース②:転勤・引越しで売りたい場合
急な転勤や引越しでやむを得ず売却を検討するケースも多くあります。この場合、売却か賃貸に出すかを最初に検討することが重要です。
売却する場合 通常の売却手続きで進められます。ただし転勤の場合はスケジュールが限られることが多いため、早めに査定を依頼し、売却活動の期間を十分に確保することが大切です。
賃貸に出す場合 住宅ローンが残っている物件を賃貸に出す場合は、原則として金融機関への事前確認が必要です。住宅ローンは「本人が居住すること」を条件としているケースが多く、無断で賃貸に出すとローンの一括返済を求められる場合があります。転勤の場合は「やむを得ない事情」として認められるケースもあるため、まず金融機関に相談してみましょう。
ケース③:相続した家にローンが残っていた場合
親や配偶者が亡くなり、ローンが残ったままの家を相続するケースがあります。
団体信用生命保険(団信)の確認を最初に
住宅ローンには、契約者が死亡または高度障害状態になった場合にローン残債が保険で完済される**「団体信用生命保険(団信)」**が付いているのが一般的です。被相続人がローンを契約していた場合、まず団信が適用されるかどうかを確認しましょう。団信が適用されれば、ローン残債はゼロになり、通常の売却が可能になります。
団信が適用されない場合
団信に加入していなかった場合や、民間の金融機関ではなくフラット35などで団信を外していた場合は、ローン残債が相続されます。この場合は相続人がローンを引き継いだうえで売却を進めることになります。相続登記(名義変更)も必要になるため、司法書士への相談を早めに行いましょう。
また、相続した不動産を売却する場合、相続税や譲渡所得税に関する特例措置が適用できる場合があります。税理士への相談も検討する価値があります。
ケース④:共有名義でローンが残っている場合
夫婦や親子で共有名義にしている不動産を売却する場合、共有者全員の同意が必要です。一人でも反対すれば、原則として売却を進めることはできません。
共有者全員が売却に同意している場合は、全員が売買契約書に署名・捺印する必要があります。共有者が遠方に住んでいたり、連絡が取りにくい状況にある場合は、早めに連絡を取って意思確認をしておきましょう。
万が一、共有者の一人がどうしても同意しない場合は、自分の持分だけを売却するという方法もありますが、買い手が見つかりにくく、売却価格も低くなる傾向があります。共有者間でのトラブルが深刻な場合は、弁護士への相談を検討しましょう。
ケース⑤:ローンを払えなくなってきた場合
収入の減少や予期せぬ出費などで、ローンの返済が厳しくなってきた場合は、できるだけ早く動くことが重要です。
返済を滞納し始めると、信用情報に記録が残り、その後の金融取引に影響が出るだけでなく、滞納が続けば競売手続きに移行してしまいます。競売になると、任意売却よりも低い価格での売却を余儀なくされ、手元に残るお金もほとんどなくなってしまいます。
**返済が苦しくなったら、まず金融機関に相談しましょう。**返済期間の延長や一時的な返済猶予などの対応をしてもらえる場合があります。それでも解決が難しい場合は、前のセクションで解説した任意売却も選択肢のひとつです。
売却時にかかる費用と税金

住宅ローンが残っている家を売却する際には、売却代金がそのまま手元に残るわけではありません。さまざまな費用や税金が発生するため、事前に把握しておくことが大切です。想定外の出費で手元資金が不足するといったことがないよう、しっかり確認しておきましょう。
費用①:住宅ローンの一括繰り上げ返済手数料
売却時にローンを一括返済する際、金融機関に繰り上げ返済手数料がかかる場合があります。金額は金融機関やローンの種類によって異なります。
| ローンの種類 | 手数料の目安 |
| 変動金利型・固定期間選択型 | 無料〜数万円程度 |
| 全期間固定金利型(フラット35など) | 無料〜数万円程度 |
| 固定金利型(銀行独自商品など) | 数万円〜数十万円程度 |
事前に金融機関に確認しておくと安心です。
費用②:抵当権抹消登記費用
ローンを完済したあと、法務局で抵当権抹消の登記手続きが必要です。この手続きは通常、司法書士に依頼します。
- 登録免許税:不動産1件につき1,000円
- 司法書士報酬:1万〜2万円程度
費用自体はそれほど大きくありませんが、決済日までに手続きの段取りを済ませておく必要があります。
費用③:仲介手数料
不動産会社に売却を依頼した場合、成約時に仲介手数料が発生します。仲介手数料には法律で上限が定められており、売却価格に応じて以下のように計算されます。
| 売却価格 | 仲介手数料の上限(税抜) |
| 200万円以下の部分 | 売却価格の5% |
| 200万円超〜400万円以下の部分 | 売却価格の4% |
| 400万円超の部分 | 売却価格の3% |
たとえば売却価格が3,000万円の場合、仲介手数料の上限は**96万円(税抜)**となります。多くの場合、上限額が請求されるため、売却計画の段階で織り込んでおきましょう。
費用④:その他の諸費用
上記以外にも、以下のような費用が発生することがあります。
- 印紙税:売買契約書に貼付する収入印紙代(売却価格によって異なる)
- 引越し費用:売却後の他の住居への移転にかかる費用
- ハウスクリーニング・リフォーム費用:売却前に物件の状態を整える場合に発生
税金①:譲渡所得税
家を売却して利益(譲渡所得)が出た場合、**譲渡所得税(所得税・住民税)**がかかります。
譲渡所得は以下の計算式で求められます。
譲渡所得 = 売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)
取得費とは購入時の価格(建物は減価償却後)、譲渡費用とは仲介手数料などの売却にかかった費用です。
税率は不動産の所有期間によって異なります。
| 所有期間 | 所得税 | 住民税 | 合計税率 |
| 5年以下(短期譲渡所得) | 30% | 9% | 39% |
| 5年超(長期譲渡所得) | 15% | 5% | 20% |
ここで注意が必要なのが、「5年」の計算方法です。所有期間は売却した年の1月1日時点で判定されます。つまり、購入日から5年が経過していても、売却した年の1月1日時点で所有期間が5年以下であれば、短期譲渡所得として扱われます。
たとえば、2019年9月に購入した不動産を2024年11月に売却した場合、売却年(2024年)の1月1日時点での所有期間は約4年3ヶ月となり、5年以下と判定されるため、税率の高い**短期譲渡所得(39%)**が適用されます。この場合、2025年1月1日以降に売却すれば所有期間が5年超となり、**長期譲渡所得(20%)**が適用されます。
売却のタイミングによって税負担が大きく変わるため、売却を急いでいない場合は1月1日をまたぐことを意識してスケジュールを組むことが節税につながる場合があります。
税金②:3,000万円特別控除の特例
マイホームを売却した場合、一定の条件を満たせば譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例があります。これを「居住用財産の3,000万円特別控除」といいます。
多くのケースでこの特例が適用されるため、実際には譲渡所得税がかからないことも少なくありません。
主な適用条件
- 現在居住している、または以前居住していた不動産であること(転居後3年を経過する日の属する年の12月31日までの売却であること)
- 売った年の前年・前々年にこの特例を受けていないこと
- 売主と買主が親子・夫婦などの特別な関係でないこと
税金③:オーバーローンの場合は譲渡損失の特例も
オーバーローンで売却損が出た場合、条件を満たせば**「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」**を利用できる場合があります。この特例を使うと、売却損を給与所得などの他の所得と相殺(損益通算)したり、翌年以降に繰り越して控除したりすることができます。
適用条件が細かく設定されているため、詳細は税理士や税務署に確認することをおすすめします。
手取り額のシミュレーション例
売却価格3,000万円、ローン残債2,000万円のアンダーローンのケースで、おおよその手取り額を試算すると以下のようになります。
| 項目 | 金額 |
| 売却価格 | 3,000万円 |
| ローン一括返済 | −2,000万円 |
| 仲介手数料(上限) | −約96万円 |
| 繰り上げ返済手数料 | −数万円 |
| 抵当権抹消費用 | −約2〜3万円 |
| 印紙税など | −数万円 |
| 手取り概算 | 約890〜900万円 |
※譲渡所得税については、3,000万円特別控除が適用される場合は非課税となるケースが多いです。あくまで概算であり、実際の金額は状況によって異なります。
不動産売却の費用の詳細についてはコチラ。
不動産売却の費用を完全解説|払うべき費用・払わなくていい費用を見極める
失敗しないための注意点

住宅ローンが残っている家の売却は、正しい手順を踏めばスムーズに進められます。一方で、知識不足や判断ミスによって思わぬトラブルや損失を招くケースもあります。ここでは、特に注意しておきたいポイントをまとめます。
注意点①:金融機関への連絡なしに売却を進めてはいけない
売却を決めたら、不動産会社への相談と並行して、必ず住宅ローンを借りている金融機関にも早めに連絡を入れましょう。
住宅ローンの契約には、担保となっている不動産を処分する際には金融機関への通知・承諾が必要という条項が含まれているのが一般的です。無断で売却手続きを進めてしまうと、契約違反としてローンの一括返済を求められる可能性があります。
また、抵当権抹消の手続きには金融機関が発行する書類が必要です。決済日直前に慌てることのないよう、早い段階から金融機関と連携しておくことが重要です。
注意点②:売却価格の設定を誤らない
売却価格の設定は、売却の成否を左右する重要な判断です。
高すぎる価格設定は買い手がつかず、売却活動が長期化します。その間もローンの返済は続くため、結果的に損をすることになりかねません。一方、低すぎる価格設定はローン残債を下回るオーバーローンに陥るリスクがあります。
適切な価格を見極めるためには、複数の不動産会社に査定を依頼して相場を把握することが大切です。査定額が1社だけでは偏りが生じる可能性があるため、最低でも2〜3社に依頼することをおすすめします。
注意点③:売却にかかる期間を甘く見ない
不動産の売却は、査定依頼から引渡しまで一般的に3〜8ヶ月程度かかります。転勤や離婚など、期限が決まっている場合は特に、早めに動き出すことが重要です。
売却活動が長引くほど、その間のローン返済・管理費・固定資産税などのコストがかさみます。売却を検討し始めた段階で、できるだけ早く査定を依頼し、スケジュールの見通しを立てるようにしましょう。
注意点④:住み替えの場合は売却と購入のタイミングに注意
現在の家を売却して新たに住み替える場合、「売り先行」と「買い先行」のどちらで進めるかを慎重に判断する必要があります。
売り先行(現在の家を売ってから新居を購入する)
- 売却代金を確認してから購入計画を立てられる
- 売却後に仮住まいが必要になる場合がある
- 資金計画が立てやすい
買い先行(新居を購入してから現在の家を売る)
- 仮住まいが不要で引越しが1回で済む
- 売却が長引いた場合、二重ローンになるリスクがある
- 資金に余裕がある場合に向いている
どちらにもメリット・デメリットがあります。資金状況やライフスタイルに合わせて、不動産会社とも相談しながら判断しましょう。
注意点⑤:任意売却は信頼できる不動産会社の選定が重要
オーバーローンで任意売却を検討する場合、不動産会社選びが特に重要になります。任意売却は通常の売却よりも手続きが複雑で、金融機関との交渉力や専門知識が求められるため、実績と経験のある会社に依頼することが不可欠です。
残念ながら、任意売却を専門にうたいながら、売主に不利な条件で契約を進めたり、不必要なサービスを押し付けたりする悪質な業者も存在します。以下の点を参考に、信頼できる会社を慎重に選びましょう。
- 任意売却の実績が豊富か
- 手数料や費用について明確に説明してくれるか
- 金融機関との交渉経験が豊富か
- 売主の立場に立って親身に対応してくれるか
不安な場合は、弁護士や司法書士などの専門家に相談しながら進めることも有効です。
注意点⑥:税金・特例の適用条件を事前に確認する
前のセクションで解説したとおり、売却時には譲渡所得税が発生する場合があります。一方で、3,000万円特別控除などの特例を活用することで、税負担を大幅に軽減できるケースも多くあります。
ただし、特例の適用には細かい条件があり、**「住み替え先を購入した年に売却した場合は適用できない」「買い替え特例と3,000万円控除は同時に使えない」**など、知らずにいると損をするケースもあります。
売却前に税理士や税務署に確認し、自分のケースでどの特例が使えるかを把握しておくことを強くおすすめします。
まとめ

ここまで、住宅ローンが残っている家の売却について、仕組みから手順、ケース別の対処法、費用・税金、注意点まで幅広く解説してきました。最後に、重要なポイントを整理します。
この記事のポイントまとめ
① ローンが残っていても家は売れる
住宅ローンが残っていても、抵当権を抹消することで売却は可能です。売却代金でローンを完済し、抵当権抹消・所有権移転を決済日に同時に行うのが基本的な流れです。
② まずアンダーローンかオーバーローンかを確認する
売却の難易度や対応方法は、売却予想額とローン残債の関係によって大きく変わります。ローン残債の確認と不動産査定が、すべての出発点です。
③ オーバーローンでも選択肢はある
売却額がローン残債を下回る場合でも、自己資金での補填・住み替えローン・任意売却といった対処法があります。状況が厳しい場合でも、競売になる前に早めに動くことが重要です。
④ 状況によって対応方法は異なる
離婚・転勤・相続・共有名義など、置かれている状況によって確認すべき点や手続きが変わります。自分のケースに合った対応を、専門家にも相談しながら進めましょう。
⑤ 費用と税金を事前に把握しておく
仲介手数料・繰り上げ返済手数料・譲渡所得税など、売却にはさまざまなコストが伴います。一方で、3,000万円特別控除などの特例を活用することで税負担を抑えられる場合もあります。売却前に全体的なコストを把握したうえで計画を立てましょう。
⑥ 早めの行動が選択肢を広げる
売却を検討し始めたら、できるだけ早く動き出すことが大切です。時間的な余裕があるほど、価格交渉や売却タイミングの調整など、有利に進められる場面が増えます。特に返済が苦しくなってきた場合は、手遅れになる前に金融機関や専門家への相談を躊躇わないようにしましょう。
売却を検討し始めたら、まずやること
難しく考えすぎず、最初の一歩はシンプルです。
- ローン残債を確認する(返済予定表・残高証明書・金融機関への問い合わせ)
- 不動産会社に査定を依頼する(複数社への依頼がおすすめ)
- アンダーローン・オーバーローンを判断する
- 必要に応じて専門家(税理士・司法書士・弁護士)に相談する
住宅ローンが残っていることは、決して売却の「壁」ではありません。正しい知識を持って手順良く臨めば、多くのケースで売却を実現することができます。この記事が、皆さんが売却を検討する際の一助となれば幸いです。
執筆者:松村保誠
宅建士・1級FP技能士・マンション管理士
宅建士3200名超を指導、不動産関連著書9冊


