媒介契約の選び方で損をしない|一般・専任・専属専任の違いを売主目線で徹底解説
執筆者:松村保誠(宅建士・1級FP技能士・マンション管理士)
2026年6月26日

不動産を売却しようと思い立ったとき、最初の関門のひとつが「媒介契約」の選択です。一般媒介、専任媒介、専属専任媒介——不動産会社の担当者から説明を受けても、正直なところどれが自分に合っているのかよくわからない、という方がほとんどではないでしょうか。
問題は、不動産会社が「おすすめします」と言ってくる契約が、必ずしも売主にとって最善の選択とは限らないという現実です。どの媒介契約を選ぶかによって、不動産会社が得る利益の構造が大きく変わります。つまり、担当者のすすめ方には、多かれ少なかれ会社側の利害が反映されています。
この記事では、3種類の媒介契約の仕組みや違いを整理したうえで、不動産業界の慣習や担当者の本音にも踏み込みながら、売主の立場から見て本当に有利な選択は何かを率直に解説します。「教科書的な説明」ではなく、実際に役立つ判断軸をお伝えすることを優先した内容になっています。
媒介契約とは?3種類の全体像

媒介契約の基本
媒介契約とは、不動産の売却活動を不動産会社に依頼するときに結ぶ契約のことです。口頭でのやりとりではなく、宅地建物取引業法(宅建業法)にもとづいて書面で締結することが義務づけられています。
不動産会社は、この契約にもとづいて買主の募集・紹介・交渉のサポートなどを行い、売買が成立したときに仲介手数料を受け取ります。媒介契約は宅建業法上、書面での締結が義務づけられており、口頭での依頼は認められていません。そして、一口に媒介契約といっても「一般」「専任」「専属専任」の3種類があり、どれを選ぶかによって売却活動の進め方や結果が大きく変わってきます。
3種類の媒介契約:早見表
まずは3種類の違いを表で確認しましょう。
| 一般媒介 | 専任媒介 | 専属専任媒介 | |
| 複数社への同時依頼 | できる | できない | できない |
| レインズへの登録義務 | なし | 7営業日以内 | 5営業日以内 |
| 活動報告の義務 | なし | 2週間に1回以上 | 1週間に1回以上 |
| 自己発見取引※ | できる | できる | できない |
| 契約期間の上限 | 法律上の定めなし | 3ヶ月以内 | 3ヶ月以内 |
※自己発見取引:売主が自分で買主(知人・親族など)を見つけて直接売買すること。不動産会社を介さないため、仲介手数料が不要になります。
レインズとは?
表中に登場する「レインズ(REINS)」について補足しておきます。レインズとは、国土交通大臣の指定を受けた不動産流通機構が運営するネットワークシステムで、全国の不動産会社がリアルタイムで物件情報を共有するためのデータベースです。
売主にとってレインズへの登録は、物件情報が全国の不動産会社に一斉に公開されることを意味します。登録されれば他社の担当者も買主候補を紹介できるようになるため、売却のチャンスが広がります。逆に言えば、レインズに登録されないまま売却活動が進められると、情報が特定の会社内だけに留まり、売却機会が大きく損なわれる可能性があります。この点は、後述する「囲い込み」の問題とも深く関わっています。
一般媒介契約|「選択肢が広い」は本当にメリットか?

一般媒介契約の基本
一般媒介契約は、複数の不動産会社に同時に売却を依頼できる契約です。依頼できる会社数に法律上の上限はなく、A社にもB社にもC社にも同時に依頼することができます。また、自分で買主を見つけた場合は不動産会社を介さずに売買できるため、仲介手数料が不要になります。
「窓口が多いほど売れやすいのでは?」と感じる方も多いかもしれません。確かに条件が整った物件であれば、複数社の競争が有利に働くケースもあります。しかし現実には、一般媒介契約には見落とされがちな落とし穴がいくつもあります。
不動産会社間で起きるトラブル
複数の会社に依頼すると、会社同士の間でトラブルが発生しやすくなります。最も典型的なのが、仲介手数料をめぐる争いです。
たとえば、A社が案内した買主候補に対して、B社も別ルートでアプローチしていた場合、「どちらが先に紹介したか」「どちらの功績で契約に至ったか」という争いが起きることがあります。こうしたトラブルに売主が巻き込まれるケースも少なくありません。
また、各社がバラバラに買主候補へ情報を提供するため、物件の説明内容や条件提示に食い違いが生じることもあります。買主側から見ると「A社とB社で言っていることが違う」という混乱を招き、信頼を損なって商談が破談になるリスクもあります。
売主の負担が想像以上に大きい
一般媒介契約で見落とされやすいのが、売主自身にかかる負担の大きさです。
複数社に依頼するということは、複数社とのやりとりがすべて発生するということです。各社からの電話・メール・活動報告への対応、内覧のスケジュール調整、価格交渉の状況確認——これらを並行してこなさなければなりません。
しかも、一般媒介契約には不動産会社に活動報告を義務づける規定がありません。つまり、報告が来なければ売主のほうから各社に状況を確認しに行く必要があります。「A社はどこまで動いているのか」「B社はなぜ最近連絡が来ないのか」——こうした管理を自分でやり続けるのは、想像以上に時間と労力がかかります。
さらに、複数社が同じ物件を扱っている状況では、各社が「他社より先に決めたい」という焦りから、売主に十分な確認をとらないまま「もう少し値引きできるかもしれません」といった話を買主候補にしてしまうリスクがあります。本来であれば売主が主導すべき価格交渉の主導権が、気づかないうちに担当者側に移ってしまうことも起こりえます。
不動産会社が本気になりにくい構造的な問題
売主にとってもうひとつ知っておきたいのが、一般媒介では不動産会社が積極的に動きにくい構造になっているという点です。
担当者の立場で考えると、「一生懸命動いても、他社が先に決めてしまったら手数料はゼロ」という状況です。どれだけ労力をかけても報われないリスクがある以上、専任契約の物件と比べて優先順位が下がるのは自然なことです。
また、一般媒介にはレインズへの登録義務がありません。不動産会社によっては、あえてレインズに登録せず、自社だけで買主を探そうとするケースもあります。これは情報の拡散を狭めることになり、売主にとっては不利な状況です。
一般媒介が向いているケース(条件は限定的)
以上を踏まえると、一般媒介契約が有効に機能するのはかなり条件が限定されます。
- 都市部・駅近・築浅など、需要が明らかに高く、放っておいても問い合わせが来るような物件
- 複数社とのやりとりを苦にせず、売却活動の管理に時間を割ける状況にある方
- すでに仕事を辞めているなど、売却を最優先で取り組める環境が整っている方
逆に言えば、仕事や家事・育児と並行しながら売却を進めようとしている方、不動産取引に不慣れな方にとって、一般媒介契約は想定以上に消耗する選択肢になりやすいです。複数社を自分でしっかり管理できる自信がない場合は、最初から選択肢に入れないほうが無難かもしれません。
専任媒介契約|多くの売主にとってベストバランスな理由

専任媒介契約の基本
専任媒介契約は、1社の不動産会社だけに売却を依頼する契約です。依頼できるのは1社に限られますが、自分で買主を見つけた場合は不動産会社を介さずに売買できる「自己発見取引」が認められています。契約期間は最長3ヶ月で、更新する場合は改めて契約を結び直す必要があります。
専任媒介契約のメリット
■ 担当者が本気で動く構造になっている
1社に絞ることで、担当者は「この物件は自分が決める」という前提で動くことができます。一般媒介のように「他社が先に決めてしまうかもしれない」という不確実性がないため、広告費をかけたり、積極的に買主候補へのアプローチをしたりといった動きが生まれやすくなります。売主にとっては、担当者のモチベーションが売却結果に直結する構造です。
■ 活動報告と情報公開が義務づけられている
専任媒介契約では、不動産会社に対して2週間に1回以上の活動報告が義務づけられています。また、契約締結から7営業日以内にレインズへの登録も義務づけられており、物件情報が広く流通する仕組みが担保されています。一般媒介ではこうした義務がないため、この点は大きな違いです。
■ 自己発見取引ができる
知人や親族への売却を検討している場合、専任媒介契約であれば不動産会社を介さずに直接売買することができます。その場合、仲介手数料は発生しません。この点は後述する専属専任媒介契約との重要な違いのひとつです。
■ 売主の負担が一般媒介より大幅に少ない
窓口が1社に絞られるため、やりとりする相手は担当者1人です。複数社への対応に追われることなく、売却活動の状況を一元的に把握できます。仕事や家事と並行しながら売却を進める方にとっては、この点だけでも専任媒介を選ぶ十分な理由になります。
「専属専任のメリット」は専任媒介でも要求できる
後述しますが、不動産会社が専属専任媒介契約をすすめる際の主な根拠として「レインズへの登録が早い」「報告頻度が多い」という点が挙げられます。しかしこれらは、専任媒介契約であっても売主側から要求・交渉することで十分に実現できます。
- 「契約後すぐにレインズに登録してください」と依頼することは何ら問題ありません
- 「2週間に1回ではなく、週1回報告をお願いしたい」という交渉も可能です
- 内覧件数や問い合わせ状況をこまめに共有するよう求めることもできます
つまり、専属専任契約のメリットとして強調される点の多くは、専任媒介契約でも担当者との合意次第で実現できるのです。この事実を知っておくだけで、不動産会社との交渉において売主の立場はぐっと強くなります。
専任媒介契約の注意点
専任媒介契約で最も重要なのが、不動産会社・担当者選びです。1社に絞る以上、その会社が誠実に動いてくれるかどうかがすべてに影響します。また、後述する「囲い込み」のリスクも存在するため、契約後も担当者の動きをしっかりと確認し続ける姿勢が必要です。
専任媒介契約は、適切な会社を選び、売主自身も一定の関与を続けることを前提とした契約です。「1社に任せたら完全におまかせ」という意識でいると、思わぬ結果につながることもあります。
専属専任媒介契約|不動産会社が強くすすめる「本当の理由」

専属専任媒介契約の基本
専属専任媒介契約は、3種類の媒介契約の中で不動産会社への依存度が最も高い契約です。専任媒介契約と同様に依頼できるのは1社のみですが、大きく異なるのは自己発見取引ができないという点です。たとえ売主自身が買主を見つけてきた場合でも、必ず契約した不動産会社を介して取引を行わなければならず、仲介手数料が発生します。
契約期間は専任媒介と同じく最長3ヶ月です。
表向きのメリット
不動産会社が専属専任媒介契約をすすめる際によく挙げる理由は以下の通りです。
- レインズへの登録が3種類の中で最も早い(5営業日以内)
- 活動報告の頻度が最も多い(1週間に1回以上)
- 1社に完全に集中してもらえるため、会社が最も力を入れやすい
確かにこれらは事実です。しかし前のセクションでお伝えした通り、レインズへの早期登録や報告頻度の引き上げは、専任媒介契約でも売主が要求することで実現できます。専属専任契約でなければ得られない固有のメリットかというと、実はそうとも言い切れません。
不動産会社が専属専任をすすめる「本当の理由」
ここで少し立ち止まって考えてみましょう。なぜ不動産会社の担当者は、専属専任媒介契約を積極的にすすめてくることが多いのでしょうか。
最も本質的な理由は、売主からの仲介手数料を確実に受け取れる契約形態だからです。
専任媒介契約の場合、売主が自分で買主を見つけてきた場合(自己発見取引)は、不動産会社を介さずに売買が成立するため、仲介手数料は発生しません。不動産会社にとっては、せっかく売却活動に時間と費用をかけたにもかかわらず、報酬がゼロになるリスクを常に抱えていることになります。
一方、専属専任媒介契約であれば、たとえ売主が自分で買主を見つけてきた場合でも、必ずその不動産会社を通して取引を行わなければなりません。つまり、どのような形で売買が成立しても、仲介手数料を確実に受け取ることができるわけです。
加えて、買主も自社で見つけることができれば、売主・買主の双方から仲介手数料を受け取る「両手仲介」も狙えます。専属専任媒介契約は、不動産会社にとって収益を最大化しやすい、いわば「最も旨みのある契約形態」です。
「お客様のために最も手厚いサービスを提供できる契約です」という説明は間違いではありませんが、同時に「自社の収益を最も確実に確保できる契約です」という側面も持ち合わせています。専属専任媒介契約を強く勧めてくる担当者に対しては、その提案が本当に売主の利益を優先したものかどうか、冷静に見極める視点を持っておくことが大切です。
専属専任媒介契約のデメリット
■ 自己発見取引ができない
専属専任媒介契約では、売主が自分で買主を見つけてきた場合でも、必ず契約した不動産会社を介して取引を行わなければなりません。知人や親族から「うちが買いたい」という話が出てきたとしても、仲介手数料は確実に発生します。これは不動産会社にとっては収益を確保できる仕組みですが、売主の立場からすると、本来であれば不要だったコストを強制的に負担させられることを意味します。
■ 1社への依存リスクが最も大きい
専任媒介契約でも1社への依存リスクはありますが、専属専任はその度合いがさらに高くなります。担当者の質や会社の姿勢に問題があった場合のダメージが最も大きい契約形態でもあります。
■ 囲い込みリスクが最も高い
後述しますが、専属専任媒介契約は構造上、囲い込みが発生しやすい契約です。他社からの問い合わせを意図的にシャットアウトしても、売主には気づかれにくい状況が生まれやすくなります。
専属専任媒介契約が合理的なケース
専属専任媒介契約が有効な選択肢になるケースは、限定的ではあるものの存在します。
- 遠方に住んでいるなど、売却活動の管理に時間をかけられない状況にある方
- とにかく早期売却を最優先にしており、多少の条件よりスピードを重視する方
- 担当者との信頼関係がすでに確立されており、囲い込みのリスクが低いと判断できる場合
ただしこれらのケースでも、専任媒介契約に「早期レインズ登録」「週1報告」を条件として加えることで、ほぼ同等の状況を実現できます。専属専任契約を選ぶ積極的な理由は、実のところそれほど多くないというのが実態です。
「囲い込み」とは何か|売主を守る知識

囲い込みとはどういう行為か
囲い込みとは、売却を依頼された不動産会社が、他社からの問い合わせや紹介を意図的に断ったり、妨害したりする行為のことです。
先ほど説明した通り、不動産会社は売主・買主の双方から仲介手数料を受け取る「両手仲介」を狙うことがあります。他社が買主を連れてきてしまうと、買主側の仲介手数料はその他社のものになってしまいます。そこで、他社からの問い合わせに対して「すでに商談中です」「売り止めです」などと虚偽の説明をして、自社だけで買主を見つけようとするわけです。
売主からすると、担当者が熱心に動いてくれているように見えても、実際には情報を囲い込まれているために買主候補が集まらず、売却が長引いているという状況が起きえます。しかも売主側からは囲い込みが行われているかどうかを直接確認することが難しいため、気づかないまま時間だけが過ぎていくケースも少なくありません。
囲い込みによる売主の不利益
囲い込みが行われると、売主には以下のような具体的な不利益が生じます。
■ 売却機会の損失
他社経由で来るはずだった買主候補がシャットアウトされるため、本来であれば成立していた取引が失われます。需要があるにもかかわらず売れない状態が続くことで、「売れない物件」という印象がついてしまうリスクもあります。
■ 売却価格の低下
買主候補の数が絞られれば、競争原理が働かなくなります。結果として、本来であれば実現できたはずの価格よりも低い金額での売却を余儀なくされるケースがあります。
■ 売却期間の長期化
囲い込みによって買主候補が限定されると、売却に要する期間が不必要に長くなります。売主にとっては、その間のローン返済や維持費の負担が続くことになります。
囲い込みを見抜く・防ぐ方法
囲い込みは完全に防ぐことは難しいですが、以下の方法である程度チェックすることができます。
■ レインズへの登録状況を自分で確認する
専任・専属専任媒介契約を結んだ場合、不動産会社にはレインズへの登録が義務づけられています。登録が行われると、売主はレインズから「登録証明書」を受け取ることができます。登録証明書が発行されているかどうか、また登録内容に問題がないかを確認しましょう。
■ 他社に問い合わせを装って確認する
知人などに頼んで、依頼している不動産会社に「その物件を内覧したい」と別の買主候補を装って問い合わせてもらう方法があります。「すでに商談中」「売り止め」などと断られた場合、囲い込みが行われている可能性が高いです。
■ 内覧数・問い合わせ数の報告を求める
定期的な活動報告の際に、他社からの問い合わせ件数や内覧申し込みの状況を具体的に報告するよう求めましょう。問い合わせがゼロという状態が続く場合は、囲い込みを疑う根拠のひとつになります。
■ 担当者の説明に不自然な点がないか注意する
「なかなか買い手が見つからない」「もう少し価格を下げたほうが良い」といった話が続く場合、本当に需要がないのか、それとも囲い込みによって買主候補が来ていないのかを冷静に判断する必要があります。売り出しから一定期間が経過しても内覧がほとんどない場合は、担当者に状況を詳しく確認することをおすすめします。
売主さんに対する最大の背信行為、囲い込みの詳細について知りたい方はコチラ。
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最も確かな囲い込み対策について知りたい方はコチラ。
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結論|多くの売主には「専任媒介+しっかり監視」が最善策

3種類の媒介契約を売主目線で整理する
ここまでの内容を踏まえて、3種類の媒介契約を売主目線で改めて整理します。
| 一般媒介 | 専任媒介 | 専属専任媒介 | |
| 売主の管理負担 | 大きい | 普通 | 小さい |
| 担当者の本気度 | 低くなりやすい | 高くなりやすい | 高くなりやすい |
| 情報拡散力 | 弱くなりやすい | 強い | 強い |
| 自己発見取引 | できる | できる | できない |
| 囲い込みリスク | 低い | 中程度 | 高い |
| 会社の収益確実性 | 低い | 中程度 | 高い |
| 売主にとっての総合評価 | 条件次第 | ◎ | 条件次第 |
なぜ専任媒介契約がベストバランスなのか
一般媒介契約は、複数社に依頼できるという自由度がある反面、売主自身が複数社を管理・調整し続けなければならない負担が伴います。不動産取引に精通しており、売却活動に専念できる時間と環境が整っている方でなければ、その自由度をうまく活かすことは難しいのが実態です。
専属専任媒介契約は、不動産会社への依存度が最も高く、自己発見取引もできません。メリットとして挙げられる点の多くは専任媒介契約でも実現できるにもかかわらず、不動産会社の収益を最も確実に確保できる契約形態でもあります。積極的に選ぶ理由は限られます。
その点、専任媒介契約は担当者が本気で動く構造を持ちながら、自己発見取引の余地も残されています。売主の管理負担も一般媒介ほど大きくなく、活動報告やレインズ登録の義務もあります。不動産会社に過度に有利な条件を与えることなく、売主にとって必要なメリットを確保できる、3種類の中で最も現実的な選択肢といえます。
「専任媒介+監視」という姿勢が重要な理由
ただし、専任媒介契約を選んだとしても「担当者に任せきり」では意味がありません。1社に絞る以上、その会社が誠実に動いているかどうかを売主自身が確認し続けることが不可欠です。
具体的には以下の点を契約前に担当者と合意しておき、契約後も継続的に確認することをおすすめします。
- 契約後できる限り早くレインズに登録することを確認する
- 活動報告の頻度を週1回に引き上げるよう交渉する
- 他社からの問い合わせ件数・内覧申し込み数を毎回報告に含めるよう求める
- レインズの登録証明書を受け取り、登録内容を自分で確認する
- 売り出しから一定期間が経過しても動きがない場合は、原因を具体的に説明させる
「1社に任せたから、あとはおまかせ」という姿勢でいると、囲い込みや消極的な活動に気づかないまま時間が過ぎてしまうリスクがあります。専任媒介契約は、売主が適切に関与し続けることを前提とした契約です。
良い担当者・会社を見極めるポイント
専任媒介契約の成否は、担当者選びに大きく左右されます。最後に、信頼できる担当者・会社を見極めるための簡単なチェックポイントを挙げておきます。
- 媒介契約の種類について、メリットだけでなくデメリットも説明してくれるか
- レインズへの登録時期や報告頻度について、こちらから聞く前に説明してくれるか
- 囲い込みについて質問したとき、誠実に答えてくれるか
- 査定価格の根拠を具体的なデータをもとに説明してくれるか
- 売却活動の計画や方針を明確に示してくれるか
逆に言えば、専属専任媒介契約を強く押してくる割にデメリットの説明がない担当者、囲い込みについて聞いたときに曖昧な答えしか返ってこない担当者には注意が必要です。売主の利益を本当に考えている担当者であれば、こうした質問に対して誠実に向き合ってくれるはずです。
よくある質問(FAQ)

Q. 専任媒介契約でも報告頻度を増やすよう要求できますか?
はい、できます。専任媒介契約では2週間に1回以上の活動報告が法律上の義務となっていますが、これはあくまでも最低限の基準です。「週1回報告してほしい」という要望は売主の正当な要求であり、契約前に担当者と合意しておくことをおすすめします。口頭での合意だけでなく、媒介契約書に明記してもらうとより確実です。
Q. レインズに登録されているか自分で確認できますか?
専任・専属専任媒介契約を結んだ場合、不動産会社はレインズへの登録後に売主へ「登録証明書」を交付する義務があります。まずはこの登録証明書が発行されているかどうかを確認しましょう。また、証明書に記載されている登録番号をもとに、レインズの一般公開サイト「不動産流通標準情報システム」で登録内容を確認することもできます。登録されているはずの時期を過ぎても証明書が届かない場合は、担当者に速やかに確認することをおすすめします。
Q. 契約途中で媒介契約の種類を変更できますか?
契約期間中に一方的に契約の種類を変更することは原則としてできません。ただし、契約期間が満了したタイミングで更新せず、別の種類の媒介契約を新たに結ぶことは可能です。また、担当者の対応に問題がある場合や、明らかな義務違反(レインズへの不登録など)が認められる場合は、契約期間中であっても解除できるケースがあります。契約解除を検討する場合は、契約書の内容を確認したうえで担当者に相談するか、専門家に助言を求めることをおすすめします。
Q. 囲い込みをされていると気づいたらどうすればいいですか?
まずは担当者に対して、他社からの問い合わせ状況や内覧申し込みの件数を具体的に説明するよう求めましょう。それでも不透明な状況が続く場合や、明らかに不自然な説明が続く場合は、契約の解除を検討することも選択肢のひとつです。囲い込みは宅建業法上の義務に違反する行為でもあるため、悪質なケースでは不動産会社が加盟する団体(公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会など)への相談窓口を利用することもできます。
Q. 知人に売る可能性があるなら最初からどの契約にすべきですか?
知人や親族への売却を検討している場合は、自己発見取引が認められている一般媒介契約または専任媒介契約を選ぶべきです。専属専任媒介契約では、知人が買主であっても必ず不動産会社を介さなければならず、仲介手数料が発生します。知人への売却の可能性がある場合は、契約前に担当者にその旨を伝えておくことをおすすめします。
まとめ

この記事では、一般・専任・専属専任の3種類の媒介契約について、不動産業界の実態も踏まえながら売主目線で解説してきました。最後に要点を整理します。
一般媒介契約は、複数社に依頼できる自由度がある反面、売主自身が複数社を管理・調整し続けなければならない負担が伴います。不動産取引に精通しており、売却活動に専念できる時間と環境が整っている方以外には、想定以上に消耗する選択肢になりやすいです。
専属専任媒介契約は、不動産会社が強くすすめてくることが多い契約ですが、その背景には「売主からの仲介手数料を確実に受け取れる」という会社側の事情があります。メリットとして挙げられる点の多くは専任媒介契約でも実現できるため、売主が積極的に選ぶ理由は限られます。
専任媒介契約は、担当者が本気で動く構造を持ちながら、自己発見取引の余地も残されています。不動産会社に過度に有利な条件を与えることなく、売主にとって必要なメリットを確保できる、多くの売主にとって最も現実的な選択肢です。
ただし、専任媒介契約を選んだとしても「担当者に任せきり」では意味がありません。以下の点を意識して、売主自身が積極的に関与し続けることが、納得のいく売却結果につながります。
- 契約前に早期レインズ登録・週1報告を担当者と合意しておく
- レインズの登録証明書を受け取り、登録内容を自分で確認する
- 内覧数・問い合わせ数を定期的に報告させ、囲い込みがないか監視する
- 担当者の説明に不自然な点があれば、遠慮なく具体的な説明を求める
媒介契約の種類を正しく選ぶことは大切ですが、最終的に売却の成否を左右するのは担当者選びと、売主自身が適切に関与し続ける姿勢です。不動産会社の言いなりになるのでもなく、かといって不信感を持ちすぎるのでもなく、対等なパートナーとして担当者と向き合うことが、満足のいく売却への近道です。
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執筆者:松村保誠
宅建士・1級FP技能士・マンション管理士
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