既存不適格建築物と違法建築物の違いとは?中古購入時の見分け方を解説
執筆者:松村保誠(宅建士・1級FP技能士・マンション管理士)
2026年6月15日

中古戸建てや中古マンションを探していて、希望条件にぴったりの魅力的な物件を見つけた!……でも、物件概要書(マイソク)の備考欄に「既存不適格」や「検査済証なし」といった見慣れない言葉が書かれていて、戸惑っていませんか?
「これって違法建築のこと?」
「住宅ローンは普通に組めるの?」
「将来、家を建て替える時にトラブルにならない?」
このように、専門用語の意味やリスクがわからず、購入に踏み切っていいのか迷う方は非常に多くいらっしゃいます。
本記事では、中古物件の購入を検討している方に向けて、「既存不適格建築物」と「違法建築物」の根本的な違いから、物件ごとの隠れたリスク、そして購入前に自分自身で適法性を見分ける具体的なステップまでを徹底解説します。
結論からお伝えすると、両者の最大の違いは以下の通りです。
- 既存不適格建築物:
建てた当時は合法だった物件。そのまま住むのは問題ないが、将来の建て替え時に家が小さくなるなどの制限(リスク)がある。 - 違法建築物:
最初から法律違反、または後から無断増築した物件。住宅ローンが組めない・将来売れないなど致命的なリスクがあるため、原則避けるべき。
「立地が良い」「相場より安い」という目の前のメリットや、不動産会社の営業トークだけで決断するのは危険です。この記事を通して、あなた自身が「目の前のメリット」と「購入することによって発生するリスク」を天秤にかけ、買っていい物件かどうかを冷静に判断できるだけの知識を身につけて下さい。
既存不適格建築物・違法建築物より怖い再建築不可物件の詳細についてはコチラ。
【図解】接道義務とは?再建築不可になる道路の条件と建て替えできる救済措置
「建てた当時」の法律を守っていたかが最大の違い

「既存不適格建築物」と「違法建築物」。どちらも「現在の法律の基準を満たしていない」という点では共通していますが、その性質は全く異なります。
この2つを分ける決定的な基準は、「その建物を建てた当時の法律(ルール)を守っていたかどうか」です。それぞれの言葉の定義と、購入者目線での違いを詳しく見ていきましょう。
既存不適格建築物とは?
既存不適格(きぞんふてきかく)建築物とは、「建築した時点で法律による規制を完全にクリアしていたものの、その後の法改正などによって、現在の基準には合わなくなってしまった建物」のことです。
日本の建築基準法や都市計画法は、大地震が起きるたびに耐震基準が見直されたり、街づくりのルールが変わったりして、幾度となく改正を繰り返してきました。
たとえば、次のようなケースが該当します。
- 建てた当時は「容積率(敷地に対して建てられる建物の延床面積の割合)200%」のエリアだったが、のちにルールが変わり「容積率150%」に制限された。
- 法改正により、新しく「接道義務(敷地が道路に2m以上接していなければならない)」が定められたが、その物件の敷地は道路に1.5mしか接していない。
このように、法律のほうが後から変わってしまったのが既存不適格です。建物自体に罪はなく、そのまま住み続ける分には全く違法性はありません(行政から取り壊しや改修を命じられることもありません)。
違法建築物とは?
一方、違法建築物(違反建築物とも呼ばれます)とは、「建築した時点から法律を無視して建てられた、あるいは完成した後に無許可で増改築を行い、法律違反となってしまった建物」のことです。
代表例としては以下のようなものがあります。
- 「この大きさの建物なら建てていい」という許可(確認済証)をもらっていたのに、工事の途中でこっそり図面より大きな建物を建ててしまった。
- 購入後に、無許可で庭に大きなプレハブ小屋やカーポートを建てた結果、決められた建ぺい率(敷地に対する建築面積の割合)をオーバーしてしまった。
こちらは明確な法律違反です。そのまま住み続けることは本来許されず、行政から指導を受けたり、最悪の場合は建物の使用禁止や除却(取り壊し)命令が出たりする可能性があります。
購入者目線で見る!両者の違い比較表
不動産を購入する立場で考えたとき、両者には実務上どのような違いがあるのでしょうか。ひと目でわかるように比較表にまとめました。
| 比較項目 | 既存不適格建築物 | 違法建築物 |
| 違法性 | なし(合法) | あり(法律違反) |
| そのまま住むこと | 問題なし | 違反(是正義務あり) |
| 住宅ローンの利用 | 比較的通りやすい | 原則不可(審査が非常に厳しい) |
| 将来の建て替え | 可能(※現在の法律に適合させる必要あり) | 可能(※現在の法律に適合させる必要あり) |
| 行政からの指導 | なし | あり(最悪の場合、取り壊し命令など) |
表を見ていただくとわかる通り、中古物件として購入の土俵に乗るのは「既存不適格建築物」までです。違法建築物は、住宅ローンが組めないなど購入にあたってのハードルが高すぎるため、一般の個人の買い手は手を出さないのが無難です。
【購入判断】既存不適格建築物のメリットと「隠れたリスク」

前章で「既存不適格建築物に違法性はない」とお伝えしました。では、違法ではないからといって、無条件に購入して良いかというとそうではありません。
既存不適格物件には、特定のニーズを持つ人にとっては大きなメリットがある一方で、将来の計画を狂わせかねない「隠れたリスク」が存在します。購入を決断する前に、この両面を正しく理解しておくことが重要です。
メリット:好立地で広さの割に価格が安いケースが多い
既存不適格建築物には、主に以下のようなメリットがあります。
今の法律では建てられない「広さ」が手に入る
昔は現在よりも建築のルール(建ぺい率や容積率など)が緩やかだった地域が多くあります。そのため、既存不適格物件は「いま同じ土地に新築を建てるよりも、床面積が広い」ことが珍しくありません。空間の広さを重視する方にとっては、大きな魅力となります。
駅近などの好立地物件が多い
ルールが変わる前からその場所に建っているため、すでに周辺環境が成熟しており、駅近や生活に便利な一等地に位置していることがよくあります。
相場よりも価格が割安に設定されやすい
後述する「建て替え時の制限」があるため、周辺の一般的な中古物件と比較して、価格が安く設定されている傾向にあります。「初期費用を抑えて広くて便利な家に住むこと」を優先する方にとっては、掘り出し物になる可能性があります。
デメリット:建て替え時に「今の家より小さくなる」可能性
既存不適格建築物を購入する最大のデメリットであり「隠れたリスク」となるのが、将来建物を壊して新しく建て替える(再建築する)際の制限です。
既存の建物をそのまま使う分には問題ありませんが、建て替える場合は「現在の法律(現行法)」を遵守しなければなりません。その結果、以下のような事態が起こり得ます。
セットバック(道路後退)による敷地の減少
現在の建築基準法では「建物の敷地は、幅4メートル以上の道路に2メートル以上接していなければならない」と定められています。もし目の前の道路幅が4メートル未満だった場合、建て替えの際に道路の中心線から2メートル後退した線を「境界線」としなければなりません(これをセットバックと呼びます)。
後退した部分の土地には家はおろか、門や塀も建てられなくなるため、実質的に使える敷地面積が目減りしてしまいます。
建ぺい率・容積率の制限で家が小さくなる
用途地域の変更などで、建築当時よりも建ぺい率(敷地に対する建築面積)や容積率(敷地に対する延床面積)が厳しくなっている場合、今の家と同じ大きさの家は建てられません。例えば、「今は3階建てだけど、建て替えたら2階建てまでしか建てられない」といったことが起こりうるわけです。
【購入判断のポイント】
既存不適格建築物は、「リフォームやリノベーションをして、いまの建物を長く使い続ける」という前提であれば、非常にコストパフォーマンスの高い選択肢になります。
しかし、「とりあえず古家付きで買って、数年後に新築に建て替えよう」と考えている場合は、思い通りの家が建たない可能性もあるため、慎重な判断が求められます。
【購入判断】違法建築物を「原則避けるべき」3つの理由

既存不適格建築物が「条件次第では検討の余地がある物件」であるのに対し、「違法建築物」は原則、一般の買い手は購入を避けるべきです。
その理由は、単に「法律違反だから」という道徳的な問題だけではなく、金銭面や将来のライフプランにおいて、取り返しのつかない大きなリスクを背負うことになるからです。以下、購入を避けるべき3つの理由を解説します。
1. 住宅ローンの審査が通らない(現金購入が前提になる)
最大の壁となるのが、資金調達の問題です。金融機関はコンプライアンス(法令遵守)を重視するため、違法状態にある物件に対しては、原則として住宅ローンを融資しません。
金融機関にとって、住宅ローンの担保物件は、万が一返済が滞った際に売却して資金を回収するための重要な資産です。違法建築物は資産価値が著しく低く、買い手もつきにくいため、担保としての評価がつかないのです。
そのため、違法建築物を購入する際は、原則として「現金一括」での支払いが前提となります。一部のノンバンクなどで融資を受けられる可能性もゼロではありませんが、金利が著しく高いなど、非常に不利な条件を飲まざるを得ません。
2. 将来売却したくても「次の買い手」が見つかりにくい
マイホームを購入する際、「一生住むつもり」と考える方は少なくありません。しかし、転勤や家族構成の変化、あるいは老後資金の確保など、将来的に家を売却する可能性は十分にあります。
ここで立ちはだかるのが、違法建築物の「いざ手放そうとしても売却できない」という大きな壁です。
理由は明確です。自分が購入するときにローンが組めなかったのと全く同じ理由で、「次の買い手」も住宅ローンを組むことができないからです。購入できる人が「手元に十分な現金を持っている人」に限定されてしまうため、通常の不動産市場ではなかなか買い手が見つかりません。
その結果、訳あり物件の専門業者に相場より大幅に安く買い叩かれたり、最悪の場合は長期間売れ残ったまま、維持費や固定資産税だけを払い続ける「負動産(ふどうさん)」を抱え込むリスクがあるのです。
3. 行政指導や命令の対象になる法的リスク
違法建築物を所有し続けること自体が、常に法的リスクと隣り合わせとなることを意味します。
もし行政のパトロールや近隣住民からの通報などで違法状態が発覚し、行政から「違法状態を解消しなさい」という指導(是正勧告)を受けた場合、現在の所有者であるあなた自身が、自腹で改修工事を行わなければなりません。(「自分が建てたわけではなく、前の持ち主がやったことだ」という言い訳は通用しません)。
例えば、建ぺい率や容積率をオーバーしている物件であれば、オーバーしている部分の部屋を解体する(減築する)など、数百万円規模の大掛かりな工事費用が発生します。さらに、指導を無視するなど悪質なケースでは、建物の使用禁止や除却(取り壊し)命令といった非常に重い行政処分が下される可能性もあります。
【購入判断のポイント】
「相場より格安だから」と安易に違法建築物に手を出してしまうと、後から莫大な是正費用がかかったり、将来売りたくても売れなかったりと、結果的に大きな損をすることになります。中古物件選びにおいて、違法建築物は「原則として候補から外す」のが最も安全な判断です。
自分でできる!購入前の「見分け方」と確認ステップ

気になる中古物件を見つけたとき、「この物件は適法なのか?」「隠れたリスクはないのか?」を不動産会社の言葉だけで判断するのは危険です。
購入後に後悔しないためにも、あなた自身がチェックできる4つのステップをご紹介します。
ステップ1:物件概要書(マイソク)の備考欄をチェック
まずは、不動産ポータルサイトや店頭でもらえる物件概要書(通称:マイソク)の隅々まで目を通しましょう。特に一番下の小さな文字で書かれている「備考欄」や「特記事項」は情報の宝庫です。
ここに以下のようなキーワードがある場合は、注意が必要です。
- 「既存不適格」:将来の建て替え時に家が小さくなるなどの制限がある可能性大。
- 「再建築不可」:現在の法律では新しく家を建て直すことができない物件(※既存不適格の中でも特に厳しい状態)。
- 「セットバック要」:建て替え時に敷地の一部を道路として提供しなければならない物件。
- 「建ぺい率・容積率オーバー」:「違法建築」または「既存不適格」のどちらかの状態です。『最初からルールを無視して大きく建てた(違法)』のか、『都市計画の変更などで後からルールが厳しくなった(既存不適格)』のかによってリスクが全く異なるため、必ず理由を確認する必要があります。
これらの記載があった場合は、具体的な理由と背景を不動産会社の担当者に質問しましょう。
ステップ2:「検査済証」の有無を確認する
物件が適法に建てられたかを証明する最も重要な書類が「検査済証(けんさずみしょう)」です。
家を建てる際、図面通りの合法な建物が完成したことを行政(または指定確認検査機関)が確認した後に発行されます。
不動産会社に「この物件には検査済証がありますか?」と確認してください。これがあれば、少なくとも「建てた当時は合法だった(=違法建築ではなく既存不適格にとどまる)」と判断する強力な材料になります。
【注意!】「検査済証がない=違法建築」とは限らない
実は、平成10年(1998年)以前に建てられた古い物件の場合、検査済証の取得率が全国的に30〜40%程度と非常に低かったという歴史的背景があります。そのため、「古い物件で検査済証がない」こと自体は珍しくなく、それだけで直ちに違法建築だと決めつける必要はありません。
ステップ3:役所の建築指導課で「建築計画概要書」等を取得する
手元に書類がなく、不動産会社の回答も曖昧な場合は、ご自身で役所に行って調べることも可能です。
物件がある市区町村役場の「建築指導課(※自治体により名称は異なります)」の窓口に行き、「建築計画概要書」や「台帳記載事項証明書」という書類の閲覧・写しの交付を請求しましょう。これらの書類は、物件の所有者でなくても数百円の手数料で誰でも取得できます。
ここには、建築当時の許可の履歴や、面積、配置図などが記載されています。万が一、建築後に重大な法律違反があった場合は、違反建築物として指導を受けた履歴が残っていることもあり、実態を把握する重要な手がかりになります。
ステップ4:重要事項説明(重説)で必ず確認すべきポイント
物件の購入を決断し、いざ契約へ進む際に行われるのが「重要事項説明(重説)」です。宅地建物取引士から物件に関する重要事項の説明を受ける場ですが、ここは決して聞き流してはいけない重要な関門です。
もし検討中の物件が「既存不適格」である場合、この重説の中で必ずその旨が説明されます。その際、「現在の法律と比べて、具体的にどこが適合していないのか」を明確に確認してください。
- 前面道路の幅員が4mないため、建て替え時にセットバックが必要なのか
- 用途地域の変更によって、建蔽率や容積率がオーバーしている状態なのか
- 現在の耐震基準や防火基準を満たしていないのか
不適合の理由によって、将来建て替える際の費用や、建築できる建物のサイズといった制限の度合いがまったく変わってきます。疑問点があればその場で何度でも質問し、完全に納得できるまでは絶対に印鑑を押さない姿勢が重要です。
どうしても欲しい物件が「違法」「検査済証なし」だった場合の対策

立地も価格も間取りも理想的。「どうしてもこの物件を買いたいけれど、違法建築(あるいは適法性が証明できない)で不安が残る……」というケースもあるでしょう。
その場合、不動産会社のペースで契約を急ぐのではなく、買主であるご自身を守るために以下の2つの対策・交渉を必ず行ってください。
改修(減築など)による合法化と費用負担の交渉
違法建築であっても、リフォームや改修工事を行うことで「現在の法律に適合させる(合法化する)」ことができれば、住宅ローンの利用や将来の売却へのハードルは大きく下がります。
例えば、建ぺい率をオーバーして無断増築されたサンルームや倉庫がある場合、それらを解体・撤去(減築)すれば合法な状態に戻せる可能性があります。
この際、重要なのは「その改修費用を誰が負担するのか」という交渉です。
- 売主側に、違法部分を撤去(合法化)してから引き渡してもらう。
- 買主(あなた)が改修費用を負担する代わりに、その費用分を物件価格から値引きしてもらう。
こうした交渉を行うためには、契約前に建築士やリフォーム業者に依頼し、「どこをどう直せば合法になるのか」「費用はいくらかかるのか」の正確な見積もりを出しておくことが必須です。
大前提である「住宅ローン特約」の確実な保全
そもそも大前提として、住宅ローンを利用して物件を購入する場合、売買契約に「住宅ローン特約(融資利用の特約)」をつけるのは鉄則です。物件の適法性にかかわらず、ローンを利用するすべての買主を守るための基本中の基本と言えます。
この特約は、「予定していた住宅ローンが否決された場合、違約金などのペナルティなしで契約を白紙撤回し、支払った手付金も全額返還される」という買主にとって極めて重要な防衛手段です。
特に、既存不適格や検査済証がない物件の場合、金融機関の担保評価が厳しくなるため、一般的な中古物件と比べてローン審査が否決される確率が格段に跳ね上がります。だからこそ、「特約はついていて当たり前」という認識を強く持ち、特約の文言や条件が買主に不利な形になっていないかを確実にチェックしなければなりません。
もし、売主や不動産会社から「特約を外してほしい」「白紙解約できる期日を極端に短くしてほしい」などと要求された場合は、決して妥協せず、きっぱりと購入自体を見送る勇気を持つことが大切です。
まとめ:「将来の資産価値」と「リスク」を踏まえた冷静な判断を

いかがでしたでしょうか。最後に「既存不適格建築物」と「違法建築物」の違いについて、改めておさらいします。
- 既存不適格建築物:
建てた当時は合法。そのまま住めるが、建て替え時に「今の家より小さくなる」等の制限を受けるリスクがある。 - 違法建築物:
最初から違法、または無断増築。住宅ローン審査や将来の売却が極めて困難なため、原則として避けるべき。
中古物件探しでは、どうしても「駅からの距離」や「価格の安さ」「内装の綺麗さ」といった目の前のメリットに感情が引っ張られがちです。しかし、不動産は人生を左右する高額な買い物です。
「将来建て替えることはできるのか?」「いざという時、スムーズに売却できる資産価値はあるのか?」という出口(将来のリスク)まで見据え、書類や客観的な事実に基づいて冷静な判断を下すようにしてください。
違法建築物以外の購入を控えるべき物件についてはコチラ。
【プロが警告】絶対に買ってはいけない土地の条件12選!後悔しない見極め方を徹底解説
執筆者:松村保誠
宅建士・1級FP技能士・マンション管理士
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