市街化調整区域とは?土地が安い理由と3つのデメリット・家を建てる条件
執筆者:松村保誠(宅建士・1級FP技能士・マンション管理士)
2026年6月19日

不動産ポータルサイトで土地探しをしていると、「おっ、この土地すごく広くて安い!」と目を引く魅力的な物件に出会うことがありますよね。
しかし、物件情報の詳細欄を見ると「市街化調整区域(しがいかちょうせいくいき)」という見慣れない言葉が……。
結論からお伝えすると、市街化調整区域とは「原則として、家を建ててはいけないエリア」のことです。
周辺の相場より圧倒的に安い価格には、必ず明確な理由(裏)があります。安さに飛びついて購入してしまうと、「いざ家を建てようとしたら役所の許可が下りなかった」「住宅ローンの審査に落ちてしまった」「水道や下水を引くのに数百万円の追加費用がかかった」など、人生最大の買い物が取り返しのつかない大失敗になってしまう危険性が潜んでいます。
そこで本記事では、これからマイホーム用の土地や不動産を購入する方に向けて、市街化調整区域の「土地が安い本当の理由」から、購入前に絶対に知っておくべき「3つの大きなデメリット」、そして例外的に「家が建てられる条件」までを詳しく解説します。
この記事を読めば、安い土地に隠されたリスクを正しく見極め、後悔のない不動産選びができるようになります。ぜひ最後までお読みください。
市街化調整区域とは?

ポータルサイトで見つけた安くて広い土地。その安さの理由を知るためには、まず「市街化調整区域」という言葉の意味を正しく理解する必要があります。
一言でいうと「原則として家を建ててはいけないエリア」
日本の土地は、無秩序に開発が進んで自然環境が破壊されるのを防ぐため、都市計画法という法律によってエリアごとの「役割」が決められています。
その中で、都市の土地は大きく以下の2つに分けられます。
- 市街化区域: 街を積極的に発展させていくエリア(=家やお店をどんどん建てて良い場所)
- 市街化調整区域: 自然環境や農地を守るエリア(=原則として建物を建ててはいけない場所)
つまり、市街化調整区域とは、文字通り「市街化(街として発展すること)を調整(抑制)する」ためのエリアです。
そのため、一般的な住宅はもちろん、マンションや商業施設などを新しく建てることは、法律によって厳しく制限されています。
相場より圧倒的に価格が安い理由
「家が建てられないエリア」と聞けば、土地の価格が安い理由も納得できるのではないでしょうか。
不動産(土地)の価格は、「その土地をどれだけ自由に活用できるか」という利便性と、「買いたい人がどれくらいいるか」という需要によって決まります。
市街化区域の土地であれば、家を建てる、アパートを建てて貸す、お店を始めるなど、様々な活用方法があるため多くの人が欲しがり、価格も高くなります。
一方で、市街化調整区域の土地は「自由に家を建てられない(活用方法が極めて限定される)」ため、マイホーム購入者からの需要がほとんどありません。
買いたい人が極端に少ないため、結果として市街化区域の土地と比べて圧倒的に安い価格で売りに出されるのです。「安い」のではなく、「安くしないと売れない土地」というのが実態です。
買ってからでは遅い!市街化調整区域の「3つの大きなデメリット」

「土地代が安く済むなら、その分建物を豪華にできるかも!」と期待してしまうかもしれませんが、市街化調整区域にはその安さを吹き飛ばしてしまうほどの大きなデメリットが潜んでいます。
購入前に必ず知っておくべき、3つの落とし穴を解説します。
デメリット1. 自由にマイホームを建築・建て替えできない
最大のデメリットは、購入した自分の土地であっても、自由に家を建てたり、建て替えたりすることができない点です。
市街化調整区域で家を建てるためには、役所から特別な許可(開発許可や建築許可など)を得る必要があります。この許可を得るための条件は非常に厳しく、何ヶ月もの時間と専門家(行政書士や設計士など)への依頼費用がかかります。しかも、お金と時間をかけたからといって、必ず許可が下りる保証はありません。
また、「古い空き家が建っている土地なら、解体して新築に建て替えられるだろう」と考えるのも危険です。元々建っていた家と同じ規模(面積)でなければならないなど、建て替えにも厳しい制限がかかるケースが多く、理想の間取りが実現できない可能性が高いのです。
デメリット2. 住宅ローン審査が非常に通りにくい
マイホーム購入の際、多くの人が住宅ローンを利用しますが、市街化調整区域の物件は金融機関のローン審査が極めて厳しくなります。
銀行は、万が一ローンが返済されなくなった時のために、土地や家を「担保」にとります。しかし、市街化調整区域は「自由に家が建てられない=他の人に売ろうとしてもなかなか売れない土地」です。そのため、銀行は「担保としての価値(資産価値)が非常に低い」と判断します。
その結果、「住宅ローンの利用自体を断られる」「融資額を大幅に減らされる(多額の頭金が必要になる)」「金利が高くなる」といった事態に陥りやすく、現金一括で購入できる資金力がないと、そもそも買うことすら難しいケースが多いのです。
デメリット3. インフラ設備(上下水道など)が整っていないことが多い
「土地代が安く済んだ」と思っても、水道やガスなどのインフラ整備で、思わぬ高額な追加費用が発生することがあります。
市街化調整区域は「積極的に街を発展させないエリア」であるため、国や自治体による公共のインフラ整備(水道、下水、都市ガスなど)が後回しにされています。
- 水道:
前面道路まで水道管が通っておらず、何十メートルも離れた本管から自費で引き込むために、数百万円の費用がかかるケースがあります。 - 下水:
下水道が整備されていないエリアでは、敷地内に汚水を処理する「浄化槽(じょうかそう)」を数十万円かけて設置する必要があり、毎年の保守点検費用も自己負担となります。
このように、土地そのものは安くても、生活できる状態にするための「造成費用・インフラ整備費用」を合計すると、結果的に市街化区域で普通の土地を買うよりも高くついてしまった……という失敗例が後を絶ちません。
市街化調整区域でも「家を建てられる」例外ケースとは?

ここまで厳しいデメリットをお伝えしてきましたが、市街化調整区域の土地を絶対に買ってはいけないというわけではありません。
「原則は建築不可」ですが、一定の条件を満たせば、例外的に家を建てたり住んだりすることが認められるケースがあります。マイホーム取得の現実的な選択肢となる、代表的な3つの例外をご紹介します。
1. すでに建っている家(中古住宅)をリフォームして住む
最もハードルが低く現実的なのが、「すでに建っている中古住宅を購入し、内部をリフォームして住む」という方法です。
建物を解体して新しく建て直す「新築・建て替え」や、建物の面積を増やす「増築」には役所の厳しい許可が必要ですが、今ある建物の内部を綺麗にするだけの「リフォーム」であれば、基本的に特別な許可は不要です。
「土地の安さを活かして、こだわりのフルリノベーションをしたい」という方にとっては、有力な選択肢になります。
※注意:元の家が「農家の人しか住めない」という特別な許可(属人的な許可)で建てられていた場合、一般の人が購入しても住むことが認められないケースがあります。購入前に不動産会社に必ず確認しましょう。
2. もともと家が建っていた土地(既存宅地)での建て替え
「市街化調整区域というルールができる前から、すでに家が建っていた土地」のことを、不動産用語で「既存宅地(きぞんたくち)」と呼ぶことがあります。(※自治体によって呼び方が異なります)
ルールができる前から住んでいた人の権利を守るため、こうした歴史のある土地に関しては、「以前と同じような規模(面積)の一般的な住宅であれば、建て替えを認める」という特例が設けられていることがよくあります。
「どうしても市街化調整区域に新築を建てたい」という場合は、この特例に当てはまる土地を探すのが一般的な方法になります。
3. 自治体の条例(開発許可)で特別に認められた場合
都市計画法という国の法律だけでなく、各市町村が独自に定めている「条例」をクリアすることで、家を建てられるケースです。
例えば、「市街化調整区域の中でも、すでに家が50軒以上集まっている集落(既存集落)の中であれば、新しく家を建てても良い」といった独自の緩和ルールを設けている自治体があります。
ただし、これらのルールは「A市では認められたのに、隣のB市では全く認められない」といったように、自治体によって基準がバラバラです。素人が自分勝手に「ここは家が建ちそうだな」などと判断するのは非常に危険です。必ず購入前に役所の都市計画課などに事前相談を行う必要があります。
これから不動産を買う人に「市街化調整区域」はおすすめ?

ここまで市街化調整区域のメリット(安さ)とデメリット(建築制限やローン審査の厳しさなど)を解説してきました。では、これからマイホーム用に土地を買おうとしている方に、市街化調整区域はおすすめできるのでしょうか。
結論から申し上げます。
一般的なマイホーム探しなら「絶対に避けるべき」
はじめてマイホームを購入する一般の方や、将来的な資産価値(売りやすさ)を少しでも気にする方には、市街化調整区域の物件はおすすめできません。原則として避けるべきです。
安さに惹かれて購入しても、「いざ家を建てようとしたら許可が下りなかった」「住宅ローンが通らなかった」というトラブルが必ず発生します。さらに、将来もし「家を売って住み替えたい」と思っても買い手がつかず、手放すことすらできない「負動産」になるリスクが極めて高いためです。
「資産の目減りを気にしないスローライフ希望者」なら検討の余地あり
基本的にはおすすめしませんが、以下のような特定の条件と、何より「独自のコミュニティ(村)に溶け込む覚悟」を持つ方であれば、検討してみてもよいでしょう。
- 将来的な資産価値(値下がり)を全く気にせず、終の棲家にする覚悟がある
- 住宅ローンに頼らない現金一括での購入やインフラ整備ができる資金がある
- 地域の行事や草刈りなど、「村のコミュニティ」に積極的に参加し、溶け込む気持ちがある
- 不便さは覚悟の上で、本格的な家庭菜園や広い敷地でのスローライフをどうしても叶えたい
市街化調整区域は、単なる「安い土地」ではなく、「独特のルールと人間関係の中で暮らす場所」であることが少なくありません。「安いから」という理由だけで飛びつかず、そこに骨を埋めるくらいの気持ちがあるかどうかを慎重に見極めてください。
「市街化調整区域」かどうかを調べる方法

魅力的な値段の土地を見つけたとき、そこが本当に手を出してもいい土地(市街化区域)なのか、それとも家が建てられない「市街化調整区域」なのかは、自分でも簡単に調べることができます。
主な3つの方法をご紹介します。
1. 不動産ポータルサイトの「物件概要」欄を見る
一番手軽なのは、SUUMO(スーモ)やHOME’S(ホームズ)などの物件情報ページをチェックすることです。
ページの下部にある「物件概要」や「詳細情報」の表の中に、「都市計画」という項目があります。ここが「市街化調整区域」となっていれば、この記事で解説してきた厳しい制限がかかるエリアです。安いからといってすぐに飛びつかず、慎重に検討してください。
※「市街化区域」と書かれていた場合
原則として家を建てられるエリアです。ただし、どんな家でも自由に建てられるわけではなく、今度は「用途地域」という別の次元のルールが適用されます。詳しくは以下の記事で解説していますので、あわせて確認しておきましょう。
▶︎関連記事:【図解】用途地域とは?全13種類の違いと調べ方・選び方をわかりやすく解説
2. 各自治体のWebサイト(都市計画図)で検索する
「ポータルサイトに載っていない土地を調べたい」「検討中のエリア一帯がどういう扱いになっているか広く見たい」という場合は、インターネット検索が便利です。
スマートフォンやパソコンで、「〇〇市(市区町村名) 都市計画図」と検索してみてください。多くの自治体が、地図上で「市街化区域」と「市街化調整区域」を明確に色分けしたWebマップを公開しています。該当の住所がどちらのエリアに入っているか、ひと目で確認できます。
3. 不動産会社や役所に直接確認する
最終的に購入を検討する段階に入ったら、必ずプロの確認を挟んでください。
特に「この市街化調整区域の土地は、例外的に家が建てられる特例要件を満たしているのか?」といった判断は、素人がWebの地図情報だけで行うのは不可能です。不動産会社の担当者に詳細な調査を依頼するか、役所の「都市計画課」などの窓口で直接確認しましょう。
まとめ:安さの裏には必ず理由がある。慎重な判断を!

最後までお読みいただき、ありがとうございます。
今回は、ポータルサイトで見かける格安の土地「市街化調整区域」ついて解説しました。この記事の重要なポイントをおさらいしておきましょう。
- 市街化調整区域は、「原則として家を建ててはいけない(街を発展させない)エリア」である
- 自由に家を建てられず、住宅ローンも通りにくく、インフラ整備に多額の費用がかかる
- 例外的に建てられるケース(既存宅地など)もあるが、素人判断は禁物
- 一般的なマイホーム探しなら「絶対に避けるべき」
- 「資産価値を気にせず、村のコミュニティに溶け込む覚悟」があるスローライフ希望者のみ検討の余地あり
「相場より圧倒的に安い物件」には、必ずそれ相応の理由があります。
市街化調整区域の土地は、決して「お買い得な土地」などではなく、「限られた目的を持つ人だけが活用できる特殊な土地」です。土地探しをしていると、どうしても価格の安さや広さに目を奪われがちですが、この記事でお伝えしたデメリットやリスクをしっかりと思い出してください。
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