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契約後では手遅れ?マイホーム購入で後悔しない地盤リスクの調べ方

執筆者:松村保誠(宅建士・1級FP技能士・マンション管理士)

2026年6月21日

不同沈下で傾いている家

マイホーム探しにおいて、「水害リスク」に対する意識は年々高まっています。しかし、川の氾濫のように目で見て分かりやすいリスクの影に隠れて、意外と見落とされがちなのが「地盤リスク」です。

「ハザードマップで浸水エリアに入っていないから安心!」と思って土地を購入したものの、いざ家を建てようとしたら「地盤が軟弱で、数百万円の地盤改良工事が必要になった……」というケースは不動産取引において決して珍しくありません。

水害のリスクが「地上」のものだとすれば、地盤のリスクは「地下(目に見えない場所)」のものです。そのため、不動産のプロではない一般の方がパッと見ただけで判断するのは非常に困難です。

この記事では、これからマイホームを購入する方に向けて、地震時の揺れやすさや液状化、家の傾きなどを引き起こす「地盤リスク」の基礎知識と、購入前にご自身でできる「地盤の調べ方」を分かりやすく解説します。後から想定外の出費で泣きを見ないための資金計画のコツも紹介していますので、ぜひ物件探しの参考にしてください。

水害リスクを調べる「ハザードマップ」の正しい見方と注意点についてはコチラ。
マイホーム購入者必見!ハザードマップの正しい見方と3つの落とし穴

1. マイホーム購入で直面する「3つの地盤リスク」とは?

3つの地盤リスクについて説明しようとしている40代の男性 FP

「地盤が弱い」と聞くと、なんとなく地震の時に危なそう、というイメージを持つ方が多いと思います。しかし、具体的にどのような被害をもたらすのかを正しく理解しておかないと、物件選びの判断基準がブレてしまいます。

マイホームを購入する際、地盤の弱さが引き起こす代表的なリスクは以下の3つです。

リスク①:地震による「揺れ幅の増大」と「液状化現象」

地盤が軟弱な場所(泥や水分を多く含む土地など)では、硬い岩盤の上に比べて、地震の揺れが大きく増幅される性質があります。つまり、同じ震度の地震が起きても、地盤が弱い土地に建っている家の方が激しく揺れ、建物へのダメージが大きくなってしまうのです。

また、水分を多く含む砂質の地盤では「液状化現象」のリスクがあります。地震の強い揺れによって地盤がドロドロの液体のようになり、マンホールが浮き上がったり、家が沈み込んで傾いたりする非常に恐ろしい現象です。海沿いの埋立地や、昔は川や池だった場所などで特に注意が必要です。

リスク②:家が徐々に傾く「不同沈下(ふどうちんか)」

地震などの災害がなくても発生する地盤リスクが「不同沈下」です。

これは、地盤が建物の重さに耐えきれず、均等ではなく「斜めに傾いて沈み込んでしまう」現象を指します。

家が傾くと、外壁や基礎にヒビが入るだけでなく、「ドアや窓が開け閉めしにくくなる」「床に置いたビー玉が転がる」といった症状が現れます。さらに恐ろしいのは、傾いた家で生活を続けると、めまいや頭痛、吐き気といった深刻な健康被害(シックハウス症候群に似た症状)を引き起こすことがある点です。一度沈んだ家を水平に戻すには、ジャッキアップなどの大規模な修繕が必要となり、数百万円単位の莫大な費用がかかります。

リスク③:高低差のある土地における「擁壁(ようへき)の崩壊リスク」

丘陵地や高台など、道路や隣の土地との間に「高低差」がある土地を購入する場合は、土留めとして作られているコンクリートなどの壁「擁壁(ようへき)」にも注意が必要です。

古い擁壁は、経年劣化によってひび割れや膨らみが生じていることがあります。もし大雨や地震で擁壁が崩壊すれば、自分の家だけでなく近隣の住宅を巻き込む大事故につながりかねません。

また、「現在の安全基準を満たしていない古い擁壁(不適格擁壁)」の場合、家を建て替える際に擁壁を新しく作り直すよう自治体から指導されることがあります。擁壁のやり直し工事は、規模によっては建物の建築費とは別に数百万〜一千万円以上の出費になることもある、隠れた巨大リスクです。

2. プロも実践!契約前に自分でできる「地盤の調べ方」

購入予定の土地の地盤について調べるべく国土地理院の地理院地図をインターネットで閲覧している40代の女性

地盤の強さは、目視で判断することはできません。だからといって「不動産会社が大丈夫と言っているから」「なんとなく雰囲気が良いから」と人任せにしてしまうのは危険です。

本格的な地盤調査は後述する通り「契約後」に行われることが多いのですが、実は契約前の検討段階でも、ご自身で地盤リスクの目安を調べることは十分に可能です。ここでは、不動産のプロも実務で活用している「デジタル」と「アナログ」両方の調べ方を解説します。

【デジタル編】無料のWebツールを活用する

現在は、スマートフォンやパソコンから無料で簡単に地盤のリスクを調べられる便利なツールが充実しています。

  • 地盤サポートマップ(ジャパンホームシールド株式会社)
    住所を入力するだけで、その土地の「地震時の揺れやすさ」「液状化の可能性」「微地形(自然の地形)」などが視覚的に分かります。周辺の避難所なども同時に調べられるため、物件探しのお供として非常に優秀なツールです。
  • 国土地理院「地理院地図」
    国が提供している地図サービスです。地形の成り立ちや標高、活断層の位置などを重ねて表示させることができます。その土地が「台地」なのか「低地」なのかを知ることで、地盤の強さをある程度推測できます。

【アナログ編①】「旧地名」から過去の地形を推測する

実は、その土地の「地名」には、昔の地形や災害の歴史が隠されていることがよくあります。

特に注意したいのが、「水」や「低地」を連想させる漢字が使われている地名です。

  • 水に関連する漢字:
    水、川、海、池、沼、沢、津、浜、洲、河、波など(※「さんずい」の付く漢字全般)
  • 低地や窪地に関連する漢字:
    谷、窪(久保)、下、溝、落など

こうした漢字が使われている場所は、元々川だった場所を埋め立てた土地であったり、水が集まりやすい低い土地であったりする可能性が高く、地盤が軟弱な傾向があります。

現在はおしゃれな地名(〇〇丘、〇〇台など)に変更されていても、図書館などで古い地図を調べると元の地名にこれらの漢字が入っているケースもあるため、市町村の合併前や区画整理前の「旧地名」を調べてみるのも有効な手段です。

【アナログ編②】昔の「航空写真」や「古地図」を見る

現在きれいに整備された分譲地でも、「昔そこが何だったのか」を知ることで地盤のリスクが見えてきます。

例えば、「昔は田んぼや湿地だった」「川や大きな池があった」といった場所を埋め立てて造成した土地は、地盤沈下や液状化のリスクが高くなります。

これを調べるには、国土地理院のWebサイト等で公開されている「過去の航空写真」を見るのが一番手っ取り早い方法です。1970年代やそれ以前の白黒の航空写真と現在の地図を見比べることで、「ここは昔、ため池だったんだな」「川の流れが変わって、今の住宅街になっているんだな」といった土地の歴史(履歴)を視覚的に確認することができます。

3. 要注意!不動産取引における「地盤調査」のリアルな実態

地盤調査の結果、地盤改良費用として200万円余分にかかることを知って真っ青になっている40代の男性

ご自身で地名や古地図を調べ、「ここなら地盤も強そうだし、買っても大丈夫そうだ!」と判断したとします。しかし、ここで不動産取引における「最大のジレンマ」とも言える事実を知っておく必要があります。

地盤調査は「土地を買った後」に行われるのが一般的

「地盤が弱いと怖いから、買う前にプロにしっかり調査してもらおう」

マイホーム購入者であれば誰もがそう考えるはずですが、実は注文住宅を建てるために土地を購入する場合、本格的な地盤調査は「土地の売買契約を結んだ後(土地の引き渡し後)」に行われるのが一般的です。

なぜなら、住宅を建てる際の一般的な地盤調査(SWS試験など)は、「建物の配置(家の間取りと建つ位置)」が確定していないと正確な調査ができないからです。家が建つ予定の四隅と中心のポイントに鉄の棒を突き刺して地盤の硬さを測るため、「どんな家をどこに建てるか決まっていない段階」や「売主の古い家がまだ建っている状態」では調査ができません。

つまり買い手は、「その土地の地盤が本当に強いのか、弱いのかが100%確定していない状態」で土地の売買契約書にハンコを押さなければならないのです。

もし地盤が弱かったら?「地盤改良工事」の想定外の出費

契約後に地盤調査を行い、もし「地盤が軟弱で、そのまま家を建てると不同沈下(家が傾く)の恐れがある」と判定された場合はどうなるのでしょうか?

この場合、家を安全に支えるための「地盤改良工事」を行うことが必須となります。地盤改良を行わないと家を建ててはいけないという判定になるため、避けて通ることはできません。

この地盤改良工事にかかる費用は、すべて「買主(施主)の負担」となります。地盤の弱さ(軟弱地盤の深さ)によって、以下のように工事の規模と費用が大きく変わります。

  • 表層改良工法(軟弱な地盤が浅い場合):
    地表から2メートル程度までの土にセメント系の固化材を混ぜて固める工法。
    【費用の目安】約30万円〜50万円程度
  • 柱状改良工法(軟弱な地盤が中程度の場合):
    地中に直径50センチ程度の穴を掘り、セメントと土を混ぜてコンクリートの柱を何本も作って家を支える工法。(深さ2〜8メートル程度)
    【費用の目安】約50万円〜100万円程度
  • 鋼管杭工法(軟弱な地盤が深い場合):
    強固な地盤(支持層)が深くにある場合、そこまで鉄のパイプ(鋼管杭)を深く打ち込んで家を支える工法。(深さ30メートル程度まで対応可能)
    【費用の目安】約100万円〜200万円以上

もし一番重い判定(鋼管杭工法など)が出た場合、土地代と建物代に加えて、150万円や200万円といった想定外の現金がいきなり必要になるわけです。ギリギリの予算で住宅ローンを組んでいた場合、この出費によって資金計画が完全に破綻してしまう恐れがあります。

4. 地盤リスクから身とお金を守る「賢い対策」

地盤改良費用として100万円が必要となることを見込んで作成されている資金計画表

「土地を買った後でないと、地盤の本当の強さは分からない」

この不動産取引の仕組み自体を、買い手の力で変えることはできません。しかし、あらかじめ最悪のケースを想定して「防衛策」を打っておくことは十分に可能です。

地盤リスクによる金銭的なダメージを防ぎ、安心して家づくりを進めるための2つの賢い対策をご紹介します。

資金計画にはあらかじめ「地盤改良費用(約100万円)」を組み込んでおく

土地から購入して注文住宅を建てる場合、最も確実な防衛策は「最初から地盤改良費用がかかるものとして予算を組んでおくこと」です。

総予算がギリギリの状態で「地盤改良が不要であることを祈る」ような資金計画は、ギャンブルと同じで非常に危険です。地域や土地の広さにもよりますが、あらかじめ「約100万円」を地盤改良の予備費として見積もりに組み込んでおきましょう。

もし契約後の地盤調査で「改良工事が必要」となっても、あらかじめ予算を確保してあるので慌てることはありません。

逆に、調査の結果「地盤が強固で改良工事は不要」と判定されたらどうなるでしょうか? その場合は、確保していた100万円がまるまる浮くことになります。そのお金を外構(お庭)のグレードアップに回したり、新しい家具や家電の購入資金に充てたり、あるいはそのままローンの借入額を減らすこともできます。

「足りなくて困る」ことはあっても、「余って困る」ことはありません。予備費を組み込んだ余裕のある資金計画こそが、最大の地盤対策となります。

建売住宅や分譲マンションを選ぶ場合のチェックポイント

ここまでは「土地から購入して家を建てる」ケースを中心にお話ししてきましたが、すでに建物が完成している(または建築中の)「新築の建売住宅」や「分譲マンション」を購入する場合はどうでしょうか。

これらの物件の場合、売主(不動産会社やハウスメーカー)がすでに地盤調査を行っており、必要に応じて地盤改良工事も済ませた上で建物を建てています。そのため、買い手が後から追加で改良費用を請求されることはありません。

ただし、「費用がかからない=安心」と盲信するのは禁物です。購入を検討する際は、契約前に必ず以下の2点を確認してください。

  1. 「地盤調査報告書」を見せてもらう:
    どのような調査が行われ、その土地の地盤がどういう状態だったのか、改良工事は行ったのか(行った場合はどのような工法か)を書面で確認しましょう。
  2. 「地盤保証書(品質保証)」の有無と期間を確認する:
    万が一、引き渡し後に家が傾く(不同沈下)などの被害が起きた場合、修復費用を補償してくれる保険(地盤保証)がついているかを確認します。通常は10年〜20年の保証期間が設けられています。

優良な不動産会社であれば、これらの書類を契約前の段階で快く提示し、分かりやすく説明してくれます。逆に、書類の提示を渋ったり、「大丈夫ですから」と口頭だけで済ませようとする会社には少し注意が必要です。

まとめ:地盤リスクは「事前のリサーチ」と「資金のゆとり」で賢く備える

住宅地内にある宅地で地盤改良工事を行っている図

いかがでしたでしょうか。マイホーム購入において、見落としがちだけれど非常に重要な「地盤リスク」について解説しました。

後から想定外の出費やトラブルで後悔しないためにも、以下のポイントをぜひ覚えておいてください。

  1. 地盤リスク(液状化・不同沈下など)は命と直結し、修繕費用も甚大になる
  2. 契約前に「Webツール」「旧地名」「過去の航空写真」で土地の歴史(履歴)を調べる
  3. 本格的な地盤調査は「土地を買った後」になるのが不動産取引の現実
  4. あらかじめ資金計画に「地盤改良費用(約100万円)」を組み込んでおく

水害リスクを予測する「ハザードマップ」と、足元の安全を確認する「地盤リスク」のチェックは、安心できるマイホーム探しの両輪です。

目に見えない地盤の弱さを100%事前に見抜くことはプロでも困難ですが、「過去の履歴を自分で調べること」と「最悪のケースを想定した資金計画を立てること」の2つを実践しておくことで、リスクや不安は大幅にコントロールできます。

ぜひ今回の知識を活用して、ご家族が安心して長く暮らせる、強くて安全なマイホームを手に入れてください。

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執筆者:松村保誠
宅建士・1級FP技能士・マンション管理士
宅建士3200名超を指導、不動産関連著書9冊