空き家vs居住中、不動産売却で有利なのはどっち?100万円単位で差が出ることも
執筆者:松村保誠(宅建士・1級FP技能士・マンション管理士)
2026年6月26日

自宅の売却を検討するとき、「引っ越してから売り出すべきか、住みながら売り出すべきか」と迷う方は多いです。
結論から言えば、空き家にしてから売り出した方が、高く・早く売れやすい傾向があります。条件によっては100万円単位で売却額に差が出ることもあります。
ただし「空き家にした方がいい」と一口に言っても、その恩恵の大きさは家の状況によって異なります。また、どうしても居住しながら売らなければならないケースでも、売却結果を大きく改善できる方法があります。
この記事では、空き家と居住中それぞれの特徴と、自分の状況でどう動くべきかを具体的に解説します。
結論:空き家の方が「高く・早く」売れやすい
不動産売却において、空き家と居住中では売却結果に明確な差が出やすいです。具体的には以下の2点に現れます。
売却価格については、同じ物件でも空き家の状態で売り出した方が強気の価格設定を維持しやすく、値引き交渉に応じる幅も小さく抑えられる傾向があります。荷物が多く生活感の強い家では、その差が100万円単位になることも珍しくありません。
売却期間については、空き家は内覧の調整がしやすいため、買主候補を逃しにくいです。居住中の場合、内覧のたびに日程調整や片付けが必要になり、機会損失が積み重なります。結果として、売り出してから成約までの期間が長引きやすくなります。
なぜこのような差が生まれるのか、次のセクションで詳しく解説します。
空き家が有利な4つの理由

内覧の日程調整がしやすく、機会損失が減る
不動産売却において、内覧の数は成約率に直結します。居住中の場合、「今日は部屋が散らかっているから」「仕事で立ち会えない」といった理由で内覧を断ったり、先送りにするケースが出てきます。買主候補は複数の物件を同時に検討していることが多く、内覧を断られた物件は次の候補に埋もれてしまいがちです。
空き家であれば鍵を不動産会社に預けておくだけで、売主が不在でも何件でも内覧に対応できます。「見たいと思ったときにすぐ見られる」という状況が、成約のチャンスを最大化します。
生活感・荷物が値引き交渉の口実にされない
内覧中、買主は物件の気になる点を値引きの根拠として使おうとすることがあります。荷物の多さ、生活のにおい、使用感のある水回りといった印象は、「その分を差し引いてほしい」という交渉材料になりやすいです。
空き家であればこうしたマイナス要素が排除され、買主が値引きの口実を見つけにくくなります。価格交渉の場面で、売主側が主導権を持ちやすくなります。
ポータルサイトの写真映えが良くなる
現代の不動産売却では、SUUMOやHOME’Sなどのポータルサイトに掲載する写真が、内覧申込み数を大きく左右します。買主の多くは写真を見て内覧するかどうかを判断するからです。
荷物がなくすっきりした状態の写真は、同じ部屋でもごちゃごちゃした状態の写真より広く・きれいに見えます。第一印象の差が内覧数の差になり、内覧数の差が成約スピードと価格の差につながります。
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不動産売却の内覧対策|費用対効果の高い準備と当日の立ち会いマナー
「焦っていない売主」という構図が価格交渉で有利に働く
空き家にして売り出すということは、売却代金を待たずに先に引っ越せるだけの資金的余裕がある証明でもあります。つまり売主は「急いで売る必要がない」立場であり、買主から足元を見た値引き交渉を受けても毅然と断れます。
一方、居住中のまま売り出す場合、売却代金が次の住居費用に充てられる可能性があることが透けて見えやすく、「早く売りたいはずだ」と読まれて強引な値引きを求められるケースがあります。売主の置かれた状況そのものが、交渉力に影響するのです。
荷物の量で「差」は大きく変わる
ここまで空き家が有利な理由を解説しましたが、その恩恵の大きさは家の状況によって異なります。重要なのは「荷物の量」です。
荷物が多い家ほど、空き家にする効果が大きい
長年住んだ家に荷物がたくさん溜まっている場合、空き家にすることで売却結果が大きく変わりやすいです。部屋が荷物で埋まっている状態では、広さが伝わらず写真映えもせず、内覧時の印象も悪くなります。こうした家を空き家にしてすっきりさせると、同じ物件とは思えないほど印象が変わることがあります。「荷物を片付けただけで100万円以上高く売れた」という話は、決して大げさではありません。
ミニマリストや荷物が少ない人は差が縮まる
反対に、もともと荷物が少なくすっきりした暮らしをしている人の場合、居住中と空き家の差はそれほど大きくなりません。きれいに整理整頓されていれば、居住中でも写真映えしますし、内覧時の印象も悪くなりにくいです。
自分の家の荷物量を正直に見渡してみることが、空き家にすべきかどうかを判断する際の一つの基準になります。
居住中での売却になる場合の対策

「空き家にした方が有利とわかっていても、先に引っ越す資金的余裕がない」「次の住居が決まるまで動けない」という方も多いでしょう。そのような場合でも、売却結果を改善できる方法があります。
引っ越し前でも「先に荷物を手放す」ことが最重要
居住中での売却でもっとも効果的な対策は、引っ越しのタイミングを待たずに、不要な荷物をできるだけ早く手放すことです。
内覧が始まってから片付けようと考えている方が多いですが、それでは遅いです。売り出す前の段階で、できる限り荷物を減らしておくことが理想です。不用品回収サービスの利用、フリマアプリでの売却、トランクルームへの一時移動など、方法はいくつかあります。「引っ越しのときに捨てればいい」と思っていたものを、売却活動が始まる前に先手を打って処分しておくだけで、内覧時の印象は大きく変わります。
特に優先して片付けたい場所
荷物を減らす際、優先順位をつけて取り組むと効率的です。買主が特に気にする場所から手をつけましょう。
玄関は第一印象を決める場所です。靴や傘が溢れていると、収納の少ない家という印象を与えます。必要最低限のものだけを残し、すっきりさせておきましょう。
リビングは物件の顔となる部屋です。家具や日用品が多いと部屋が狭く見えます。使用頻度の低い家具は思い切って処分するか、トランクルームに移すことを検討してください。
収納の中も見落とせません。内覧時に収納の扉を開けて確認する買主は少なくありません。詰め込まれた収納は「この家は収納が足りない」という印象につながります。収納の中も余裕を持たせておくことが理想です。
水回りはキッチン、浴室、洗面台を含め、清潔感が特に重要な場所です。生活用品を出しっぱなしにせず、使うもの以外はしまっておきましょう。
内覧時は売主も在宅しておく
居住中の場合、内覧時は売主も在宅しておくことをおすすめします。買主から「この設備はどのくらい使っていますか」「近隣の環境はどうですか」といった質問が出ることがあり、不動産会社の担当者だけでは答えられないことも多いからです。売主が直接答えることで買主の不安が解消され、成約につながりやすくなります。
在宅する際は、買主の動線の邪魔にならない場所で待機し、聞かれたことに丁寧に答える程度にとどめましょう。過度な説明や売り込みはかえって逆効果になることがあります。
空き家にする際の注意点とコスト

空き家にしてから売り出すことには多くのメリットがありますが、注意しておきたい点もあります。
維持費は引き続きかかる
空き家になっても、固定資産税・火災保険・管理費(マンションの場合)といった維持費は変わらず発生します。売却活動が長引けばその分コストが積み重なるため、売り出し価格の設定や売却活動の進め方は不動産会社としっかり相談しておきましょう。
定期的な管理が必要
人が住んでいない家は傷みが早いです。換気がされないとカビが発生しやすくなり、水道管のトラブルも起きやすくなります。空き家にした後も定期的に訪問して換気・通水を行うか、不動産会社に管理を依頼するかを検討してください。特に売却活動が数ヶ月以上にわたる場合は注意が必要です。
セキュリティにも最低限の配慮を
荷物のない空き家とはいえ、人の気配がない家に不審者が侵入するリスクはゼロではありません。万が一のことがあればご近所にも迷惑をかけることになります。郵便物の転送手続きや定期的な訪問など、最低限の管理は続けておきましょう。
空き家にする価値が高いケース・低いケース
先に引っ越すことには費用と手間がかかります。誰もが空き家にして売り出すべきというわけではなく、自分の状況に照らして判断することが大切です。
荷物が多い・売却価格へのこだわりが強い・できるだけ早く売りたいという方は、空き家にすることで得られるメリットが大きくなりやすいです。一方、もともと荷物が少ない・引っ越し先がまだ決まっていない・資金的に先に動くのが難しいという方は、居住中のまま売却活動を進めながら、荷物の整理を同時並行で行うアプローチが現実的です。
まとめ:自分の状況別アクションチェックリスト

ここまでの内容を、状況別に整理します。
先に引っ越して空き家にできる場合
- 荷物はすべて搬出し、できるだけすっきりした状態で売り出す
- 空き家にした後も定期的に訪問して換気・通水を行う
- 郵便物の転送手続きを忘れずに行う
- 維持費がかかり続けることを念頭に置き、売り出し価格や売却戦略を不動産会社と早めに相談する
居住中のまま売却活動を進める場合
- 内覧が始まる前から不要な荷物の処分を同時並行で進める
- 玄関・リビング・収納・水回りを優先的に整理する
- 内覧時は売主も在宅し、買主からの質問に答えられるようにしておく
- 荷物が減ってきたタイミングで改めて写真を撮り直してもらうよう不動産会社に相談する
どちらの場合も共通して言えること
空き家にするかどうかに関わらず、荷物を減らすことが売却結果に直結します。「引っ越しのときに片付ければいい」という考えは売却においては通用しません。売り出す前の段階でどれだけ荷物を手放せるかが、売却価格と売却期間を大きく左右します。
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宅建士・1級FP技能士・マンション管理士
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