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高額査定にご用心!「査定額=売れる価格」ではない理由と不動産売却の罠

執筆者:松村保誠(宅建士・1級FP技能士・マンション管理士)

2026年6月25日

査定額と売れる価格は違うということを強く強調する50代の女性 FP

不動産売却の第一歩である「査定」。複数の不動産会社に依頼してみると、会社によって数百万円もの差が出ることがあり、驚かれる方も多いのではないでしょうか。

大切なマイホームや資産を手放すのですから、「1円でも高く売りたい」と思うのは当然の心理です。そのため、各社の結果を見比べて「一番高い査定額を出してくれた不動産会社に任せよう!」と考えてしまうかもしれません。

しかし、少し待ってください。実は、その考え方には大きな落とし穴が潜んでいます。

結論から言うと、「査定額」=「実際に売れる価格(成約価格)」ではありません

高い査定額を提示されたからといって、その金額で家が確実に売れる保証はどこにもないのです。それどころか、査定額の「高さ」だけを基準に不動産会社を選んでしまうと、長期間売れ残ってしまったり、最終的に相場よりも大幅に安く手放すことになったりと、取り返しのつかない失敗につながる危険性すらあります。

この記事では、不動産売却を絶対に成功させたい売主様に向けて、以下の重要なポイントを解説します。

  • なぜ「査定額」と「実際の売却価格」に差が出るのか?
  • 要注意な「高すぎる査定額」に隠された罠とは?
  • 査定額に惑わされない、信頼できる不動産会社の選び方

最後までお読みいただければ、表面的な数字のトリックに惑わされることなく、本当に適正な相場を見極め、二人三脚で売却を進められる優秀なパートナーを見つける知識が身につきます。

後悔のない不動産売却を実現するために、ぜひお役立てください。

正しい売出価格の設定方法を知りたいという方はコチラ。
【完全版】不動産の売出価格の決め方|査定価格との違いから戦略的な設定方法まで解説

「査定額」と「売却価格(成約価格)」の決定的な違い

中古戸建ての査定を行う不動産屋の男性営業マン。外観をチェックしている

不動産会社から提示される「査定額」と、最終的に物件が売れたときの「売却価格(成約価格)」。

似ているようでいて、不動産売却においてはこの2つの数字が持つ意味は全く異なります。

この違いを正しく理解していないと、「あんなに高い査定額だったのに、騙された!」と後悔することになりかねません。まずは、それぞれの本当の意味を確認しておきましょう。

査定額とは「3ヶ月程度で売却できると予想される価格」

不動産会社が提示する「査定額」とは、過去の似たような物件の取引データ(成約事例)や現在の市場動向、物件の広さや状態などを総合的に分析し、「この価格で売り出せば、およそ3ヶ月程度で買い手が見つかるだろう」と算出した【予想価格】のことです。

ここで絶対に覚えておいていただきたいのは、「査定額=不動産会社がその価格で買い取ってくれる価格」ではないということです(※不動産会社が直接買い取る「買取」の場合は異なりますが、一般的な「仲介」による売却の場合は、あくまで予測に過ぎません)。

どんなに高額な査定書を提示されたとしても、それは不動産会社による「この価格なら売れる可能性が高い」という見解であり、その金額での売却が保証されているわけではないという事実を認識しておくことが重要です。

売却価格(成約価格)とは「買主が実際に支払う価格」

一方、「売却価格(成約価格)」とは、売り出し後に実際の購入希望者が現れ、お互いの条件が合致して「最終的に売買契約が結ばれた価格(買主が実際に支払う価格)」を指します。

不動産は、スーパーに並んでいるような定価のある商品とは異なります。最終的な価格を決めるのは、不動産会社でも売主様でもなく、「その物件を、その価格で買いたいと思う買主様」です。

どれほど不動産会社が高い査定額をつけ、売主様がその価格で売り出したいと望んだとしても、市場(買主様)が「その価格では高すぎて買えない」と判断すれば、物件はいつまでも売れ残ってしまいます。

つまり、査定額はスタート地点における「目安」に過ぎず、ゴールである売却価格は「買主との交渉や市場の反応によって変動するリアルな結果」であると言えます。

なぜ「査定額」通りに売れないのか?3つの主な理由

当初、査定金額が高く喜んでいたが、全く売れる見込みが立たず、途方にくれている60代のご夫婦

不動産会社が提示した査定額が、たとえ相場に基づいた適正な金額であったとしても、最終的な成約価格がそこから下がってしまうケースは珍しくありません。

では、なぜスタート時点の価格(査定額や売り出し価格)のままスムーズに売却できないのでしょうか。それには、中古不動産市場ならではの3つのリアルな理由が存在します。

1. 買主からの「値下げ交渉」が入るため

中古不動産の売買において、最も想定しておくべきなのが買主からの「値下げ交渉(指値交渉)」です。

不動産は数千万円単位の大きな買い物であるため、買主も少しでも安く購入したいと考えます。「購入を前提にしたいので、端数の80万円を切り捨ててくれませんか?」「リフォーム費用がかかるため、100万円安くしてほしい」といった交渉が入るのが一般的です。

売主にこの交渉に応じる義務はありません。しかし、「この機会を逃すと、次はいつ買主が現れるかわからない」という心理から、多少の値下げを受け入れて契約に至るケースは非常に多く、これが査定額と成約価格に差が生じる最大の理由となっています。

2. 市場の状況や競合物件が変化するため

不動産市場は常に動いている「生き物」です。査定を行ったタイミングと、実際に売り出して買い手を探しているタイミングとでは、市場環境が変化していることがよくあります。

例えば、査定時には近隣にライバルとなる物件がなかったとしても、いざ売り出してから1ヶ月後に、すぐ近くでご自身の家よりも安くて条件の良い物件が売りに出されることがあります。

買主は必ず複数の物件を比較検討しています。そのため、強力な競合物件が現れれば、買い手を惹きつけるために対抗して価格を下げざるを得なくなるのです。

3. 売主の「早く売りたい」という事情による値下げ

売却活動が長期化すると、売主自身の事情によって自ら価格を下げるケースもあります。

「転勤の時期が迫っている」「新居の引き渡し時期が来てしまい、今の家の住宅ローンと二重払い(ダブルローン)になってしまう」「まとまった資金が早く必要になった」など、売却に期限を設けている売主は少なくありません。

当初は強気の価格(高めの査定額)で売り出したとしても、期限内に売れなければ本末転倒です。そのため、タイムリミットが近づくにつれて、確実かつ早期に売却を成立させる目的で、やむを得ず価格の引き下げ(価格改定)を決断することになります。

要注意!「高額すぎる査定額」に隠された罠

高額な査定結果に喜ぶお客さんを見て「引っかかったな」とでも言いたげにほくそ笑む不動産屋の営業マン

複数の不動産会社に査定を依頼した際、他社よりも数百万円も高い、ひときわ目を引く査定額を提示してくる会社が時折存在します。

少しでも高く売りたい売主様にとっては非常に魅力的に映りますが、実はここに不動産売却における最大の罠が潜んでいます。相場を無視した「高額すぎる査定額」には裏があることを、しっかりと知っておかなければなりません。

わざと高い査定額を出す「専任媒介契約」狙い

一部の不動産会社は、その価格で売却できる確かな根拠や自信がなくても、わざと相場よりはるかに高い査定額を提示することがあります。その目的は、売主様から売却の依頼を獲得し、自社だけで独占的に物件を取り扱える「専任媒介契約(または専属専任媒介契約)」を結ぶことです。

自社で直接物件を預かれば、売却成立時に売主様からの仲介手数料を確実に得られます。さらに、自社で買主様も見つけることができれば、売主様と買主様の両方から手数料を受け取る「両手仲介」も可能になります。

こうした大きな利益を狙うために、「うちにお任せいただければ、こんなに高く売れますよ!」と甘い言葉で気を引いているに過ぎません。このような会社は、決して「高く売るための優れた戦略」を持っているわけではなく、まずは契約を獲得するための「エサ」として、現実離れした高い数字を使っているだけなのです。

高値で売り出すことのデメリットと「売れ残り」のリスク

根拠のない高額査定を信じて、相場を無視した高い価格で売り出してしまうと、売主様には悲惨な結末が待っています。

現在の買主様は、インターネットの不動産ポータルサイト等で物件情報を入念に比較検討しており、周辺の相場を非常によく勉強しています。そのため、相場から大きく外れた割高な物件は、そもそも問い合わせや内覧の申し込みすら入りません。

そのまま長期間売れ残ると、今度は不動産会社から「反響が悪いので価格を下げましょう」と執拗に値下げを迫られるようになります。さらに恐ろしいのは、市場に長く出回り続けることで、買主様から「あの物件はずっと掲載されているけれど、何か目に見えない欠陥があるのでは?」と敬遠されてしまうことです。

最終的には市場での鮮度が落ち、当初の適正な相場価格よりもさらに安い価格で叩き売りせざるを得なくなるケースが後を絶ちません。表面的な査定額の高さに飛びつくことは、結果的にご自身の大切な資産を減らすことにつながるのです。

後悔しない!信頼できる不動産会社の選び方

いかにも誠実そうな不動産屋の営業マン。仏様のように後光がさしている。

これまで解説してきた通り、査定額の高さだけで不動産会社を選ぶのは非常に危険です。では、大切な不動産の売却を任せるパートナーは、どのような基準で選べばよいのでしょうか。ここでは、失敗しないための3つのポイントを解説します。

1. 査定額の「根拠」をしっかり確認する

不動産会社から査定書を受け取ったら、金額を見るだけでなく「なぜこの価格になったのか?」という根拠を必ず確認してください。

信頼できる担当者であれば、周辺エリアにおける過去の成約事例や現在の市場動向、物件のプラス面・マイナス面などを、客観的なデータに基づいて論理的に説明してくれます。反対に、「うちならこの価格で売る自信があります!」と、勢いだけで明確な根拠を示せない会社には注意が必要です。

2. 複数の不動産会社を比較検討し、相場を知る

最初から1社に絞り込むのではなく、必ず複数の不動産会社に査定を依頼しましょう。

3社程度の査定額を見比べることで、ご自身の物件の「適正な相場」が自然と見えてきます。相場を正確に把握していれば、1社だけ極端に高い査定額を提示されても「専任媒介契約を獲得するための罠かもしれない」と冷静に判断できるようになります。

3. 担当者の知識や対応の誠実さを見極める

不動産売却は、担当者と二人三脚で進める長期的なプロジェクトです。だからこそ、担当者の「誠実さ」が成功の鍵を握ります。

耳障りの良いこと(高い査定額やメリット)ばかりを並べるのではなく、「この物件はここが少し弱いので、こう対策しましょう」「今は競合物件が多い時期なので、売却に少し時間がかかるかもしれません」といったマイナス面やリスクについても、誤魔化さずに正直に伝えてくれる担当者を選びましょう。

まとめ:「査定額」に惑わされず適正相場での売却を目指そう

複数の不動産屋に自宅の査定依頼をした結果について検討しているご家族。一社だけ明らかに価格が高すぎるE社については除外することに決めた模様。

不動産売却において、「査定額=実際に売れる価格」ではありません。

一番高い査定額を提示した会社が一番高く売ってくれるわけではなく、むしろ相場を無視した根拠のない高額査定は、長期間の売れ残りや最終的な大幅値下げを引き起こす危険な罠になり得ます。

大切なのは、表面的な数字に惑わされることなく、客観的なデータに基づいた「適正な相場」をしっかりと把握することです。そして、その相場をベースに、確かな根拠と具体的な販売戦略を持ち、リスクも含めて誠実に寄り添ってくれる不動産会社を見つけることこそが、不動産売却を成功させる最大の鍵となります。

ぜひこの記事を参考に、信頼できる優秀なパートナーを見つけ、納得のいく不動産売却を実現してください。

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執筆者:松村保誠
宅建士・1級FP技能士・マンション管理士
宅建士3200名超を指導、不動産関連著書9冊