不動産売却の決済・引き渡し|当日の流れと事前準備を徹底解説
執筆者:松村保誠(宅建士・1級FP技能士・マンション管理士)
2026年6月26日

不動産売却の手続きは、決済・引き渡しをもって完了します。
当日は不動産会社の担当者が段取りを仕切ってくれるため、売主が手順で迷うことはほとんどありません。ただし、必要書類や持ち物に漏れがあると、その日の決済が延期になりかねません。「担当者がいるから大丈夫」と油断せず、事前準備だけはしっかりと済ませておきましょう。
また、引き渡し猶予などの特約がない限り、決済が完了した瞬間からその不動産は買主のものになります。荷物の搬出や各種手続きは、決済日よりも前に完了させておくことが大前提です。
この記事では、決済・引き渡し当日の流れと、売主として準備しておくべきことを順を追って解説します。
不動産売買契約当日の詳細についてはコチラ。
不動産売買契約当日の流れと持参するもの|署名前に売主が必ず確認すべきこと
決済・引き渡しとは何か

「決済」と「引き渡し」は別々の言葉ですが、実務上はほぼ同じ日に同じ場所でまとめて行われます。それぞれの意味を簡単に整理しておきます。
決済とは、買主から残代金を受け取る手続きのことです。売買契約時に手付金を受け取っていますので、決済日に受け取るのは売買代金からその手付金を差し引いた残額になります。
引き渡しとは、不動産の所有権を買主に移転し、物件及び鍵を引き渡す手続きのことです。所有権の移転は司法書士が登記申請という形で行います。
決済の場所は、買主が住宅ローンを利用する場合は融資を行う銀行の店舗になるのが一般的です。買主が現金で購入する場合は、不動産会社の事務所で行われることもあります。
決済・引き渡し当日の流れ

当日の手続きは、おおむね以下の順で進みます。所要時間は1時間前後が目安です。
① 集合・参加者の確認
指定された銀行や不動産会社の事務所に集合します。売主・買主のほか、不動産会社の担当者、司法書士、買主がローンを利用する場合は銀行の担当者が同席します。
② 司法書士による本人確認・書類確認
司法書士が売主・買主それぞれの本人確認と書類の確認を行います。ここで書類の不備や忘れ物が発覚すると、その日の決済が進められなくなる場合があります。
③ 融資の実行(買主がローンを利用する場合)
司法書士が必要書類の確認を終え、登記申請に問題がないと判断した時点で銀行に対してその旨を報告します。この報告を受けて銀行が融資を実行する流れになります。融資された資金が買主の口座に入金され、残代金の支払いに充てられます。
④ 残代金の受領
買主から残代金が振り込まれます。売主は入金を確認します。
⑤ 所有権移転登記の申請
入金確認後、司法書士が所有権移転登記の申請手続きを行います。これをもって不動産の所有権が正式に買主へ移転します。
⑥ 固定資産税等の精算
固定資産税・都市計画税を引き渡し日を基準に日割り計算し、売主・買主間で精算します。精算額は事前に算出されていることがほとんどで、残代金と合わせて処理されるのが一般的です。
⑦ 物件・鍵の引き渡し
合鍵を含むすべての鍵と、付帯設備の取扱説明書や保証書などを買主に引き渡します。これで手続きは完了です。
当日の参加者

決済・引き渡しの場には、複数の関係者が集まります。それぞれの役割を把握しておくと、当日の流れがよりイメージしやすくなります。
売主・買主
手続きの当事者です。本人確認書類や必要書類を持参し、各種書類への署名・捺印を行います。
不動産会社の担当者
売主側・買主側それぞれの担当者が同席します。手続き全体の進行を仕切り、双方がスムーズに手続きを終えられるようサポートします。
司法書士
本人確認と書類確認を行い、所有権移転登記の申請を担当します。登記の専門家として、手続きの要となる存在です。当日同席する司法書士は、通常、買主側が手配します。
銀行の担当者(買主がローンを利用する場合)
融資を担当する銀行の担当者が同席し、融資の実行手続きを行います。
売主が準備すべき持ち物リスト

決済当日に書類や物の忘れ物があると、手続きがその場で止まり、決済日自体を延期せざるを得なくなることがあります。事前にしっかりと準備しておきましょう。
本人確認・登記関係
- 実印
- 印鑑証明書(発行後3ヶ月以内のもの)
- 権利証(登記済証)または登記識別情報通知
- 身分証明書(運転免許証・パスポートなど)
受け取り口座関係
- 残代金の振込先口座がわかるもの(通帳やキャッシュカードなど)
物件に関する書類・物
- 鍵(合鍵を含むすべて)
- 固定資産税・都市計画税の納税通知書
- 付帯設備の取扱説明書・保証書
- マンションの場合:管理規約、使用細則、長期修繕計画書など
準備物の詳細については、事前に担当者から案内があります。案内された書類はひとつの封筒やクリアファイルにまとめておくと、当日の確認がスムーズです。
引き渡しまでに済ませておくべきこと

決済日に向けて、売主側でやっておくべき準備がいくつかあります。いずれも決済日当日では間に合わないものばかりですので、余裕を持って進めておきましょう。
荷物の搬出
決済が完了した時点で所有権は買主に移転しますので、荷物の搬出は決済日の前日までに完了させておく必要があります。決済完了後に荷物を取りに戻ることは、買主の許可なしには認められません。
この点の認識が甘く、荷物を少し残したまま決済日を迎えてしまう売主が時々います。「あとで取りに来ればいい」という感覚なのかもしれませんが、残置物は買主に迷惑をかけることになりますし、トラブルに発展するケースもあります。決済が終わればもう自分の家ではないという意識をしっかり持った上で、前日までに必ず搬出を完了させておきましょう。
引き渡し猶予の特約がついている場合は、猶予期間中は売主が引き続き物件を使用することを買主に認めてもらっている形になります。ただし所有権はすでに買主に移っている点は変わりませんので、猶予期間が終わる日までには必ず搬出を完了させておきましょう。
ライフラインの解約手続き
電気・ガス・水道については、引き渡し日に合わせて解約の手続きを行います。各事業者への連絡は、引き渡し日が決まった段階で早めに済ませておきましょう。なお、内覧対応や荷物の搬出作業中は電気や水道が必要になる場面もありますので、解約日の設定は担当者と相談しながら決めるのが無難です。
住所変更の手続き
転出届の提出や、運転免許証・金融機関・各種サービスの住所変更手続きも、引き渡し日前後のタイミングで行います。引き渡し後も旧住所に郵便物が届き続けないよう、郵便局への転送届も忘れずに済ませておきましょう。
代理人が手続きを行う場合

売主が当日やむを得ない事情で出席できない場合、代理人を立てて手続きを進めることができます。仕事の都合や健康上の理由、遠方に居住しているケースなどが該当します。
ただし、代理人による手続きは通常よりも準備が複雑になります。司法書士が事前に書類を確認する必要がありますので、代理人を立てることが決まった段階で、早めに担当者に相談してください。
代理人を立てる場合に必要な書類
売主本人の書類に加えて、以下が追加で必要になります。
- 委任状(売主本人が実印で押印したもの)
- 代理人の実印
- 代理人の印鑑証明書
- 代理人の身分証明書
注意点
委任状は司法書士が作成するのが一般的です。事前に司法書士から書式を取り寄せ、売主本人が実印を押した上で当日代理人が持参します。委任状に不備があると手続きが進められなくなりますので、内容は必ず事前に確認しておきましょう。
また、代理人には信頼できる人物を選ぶことが重要です。手続き上、売主の実印や印鑑証明書などの重要書類を預けることになりますので、家族や親族など身近な人に依頼するのが一般的です。
まとめ

決済・引き渡し当日の手続きそのものは、不動産会社の担当者が段取りを仕切ってくれますので、売主が戸惑う場面はほとんどありません。売主としてやるべきことは、必要書類と持ち物を漏れなく準備した上で、当日指定された場所に出向くことです。
ただし、書類の忘れ物があればその日の決済が延期になりかねません。担当者から案内された書類は早めに揃え、前日までに最終確認をしておきましょう。
また、荷物の搬出や各種手続きは決済日よりも前に済ませておくことが大前提です。決済が完了した瞬間から不動産は買主のものになります。「もう自分の家ではない」という意識をしっかり持った上で、気持ちよく引き渡しの日を迎えてください。
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執筆者:松村保誠
宅建士・1級FP技能士・マンション管理士
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