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付帯設備表・物件状況等報告書の書き方と注意点|免責特約があっても油断禁物な理由

執筆者:松村保誠(宅建士・1級FP技能士・マンション管理士)

2026年6月26日

付帯設備表及び物件状況等確認書の記入を行う不動産の売主

不動産の売却を進めていると、「付帯設備表」と「物件状況等報告書」という2つの書類への記入を求められます。どちらも見慣れない書類ですが、この2つの書類の記載内容が、売却後のトラブルを防ぐ最大のカギになります。

「設備の状態なんて、だいたいで書けばいいか」「多少の不具合は黙っておいても大丈夫だろう」——そう思っていると、売却後に買主から損害賠償や契約解除を求められる事態になりかねません。

さらに注意が必要なのは、戸建ての2階の天井が少し契約書で「契約不適合責任を排除する」特約を結んでいても、付帯設備表や物件状況等報告書の記載が不正確であれば、その特約が意味をなさなくなるという点です。「特約があるから安心」と油断している売主ほど、思わぬ落とし穴にはまるリスクがあります。

この記事では、不動産売却における付帯設備表と物件状況等報告書について、

  • それぞれの書類の役割と違い
  • 正確に記載しなければならない法的な理由
  • 具体的な書き方と記入時の注意点
  • 売主がよく陥るミスと対策

を、これから不動産を売却される方に向けてわかりやすく解説します。

書類への記入は「面倒な作業」ではなく、売却後の自分自身を守るための重要なプロセスです。ぜひ最後まで読んで、安心して売却を進めてください。

1. 付帯設備表・物件状況等報告書とは何か

付帯設備表と物件状況等報告書の趣旨がよくわからず、戸惑う売主さんご夫婦

付帯設備表とは

付帯設備表とは、売却する物件に備え付けられている設備について、その有無や現在の状態を一覧にした書類です。

具体的には、以下のような設備が記載対象になります。

カテゴリ 主な対象設備
空調・換気 エアコン、換気扇、24時間換気システム、床暖房
給湯・浴室 給湯器、浴室乾燥機、追い焚き設備、シャワー
キッチン システムキッチン、食洗機、ガスコンロ・IH、レンジフード
洗面・トイレ 洗面台、温水洗浄便座、トイレ換気扇
建具・開口部 雨戸、シャッター、網戸、二重サッシ
収納 床下収納、小屋裏収納、ウォークインクローゼット
外構・その他 カーポート、門扉、インターホン、照明器具、テレビアンテナ、太陽光発電設備

付帯設備表では、各設備について「有(置いていく)・無(ない)・撤去(持っていく)」のいずれかを記載し、不具合がある場合はその内容も具体的に記入します。なお、どの設備を残すかどうかは売主が一方的に決めるものではなく、買主の意向も踏まえて双方で協議しながら決定されるものです。たとえば、売主としては撤去するつもりだった設備を買主が残置を希望する場合や、その逆もあります。

この書類があることで、買主は「どの設備が残るのか」「その設備は正常に動くのか」を事前に把握できます。逆に言えば、記載のない設備トラブルが引渡し後に発覚した場合、売主が責任を問われることになります。

物件状況等報告書とは

物件状況等報告書とは、売却する物件の現在の状態や過去に起きた問題を買主に告知するための書類です。「告知書」と呼ばれることもあります。

主な記載項目は以下の通りです。

カテゴリ 主な記載内容
雨漏り・浸水 過去の雨漏り歴、床下浸水の有無
シロアリ・腐食 シロアリ被害・駆除歴、木部の腐食
給排水設備 配管の詰まり・水漏れの有無
地盤・擁壁 地盤沈下・液状化・擁壁の不具合
境界 隣地との境界確認の状況
近隣・環境 騒音・振動・臭気・嫌悪施設の有無
心理的瑕疵 事故・事件・火災などの告知事項

付帯設備表が「設備の状態」を伝えるものであるのに対し、物件状況等報告書は「物件そのものの状態や履歴」を伝えるものです。

2つの書類の違いと共通点

整理すると、2つの書類の役割は以下のように分かれます。

付帯設備表 物件状況等報告書
目的 設備の有無・状態の確認 物件の状態・履歴の告知
主な内容 エアコン・給湯器など各設備 雨漏り・シロアリ・地盤など
いつ使う 売買契約時 売買契約時

役割は異なりますが、「正確に・漏れなく記載しなければならない」という点はどちらも共通です。どちらか一方でも記載が不正確であれば、売却後のトラブルにつながります。次の章では、なぜ正確な記載がそれほど重要なのか、法的な観点から解説します。

2. なぜ正確な記載が必要なのか?「契約不適合責任」の基本

売主に対する契約不適合責任の追求手段として追完請求・代金減額請求・損害賠償請求・契約解除の4つの方法があることを説明する女性FP

契約不適合責任とは

契約不適合責任とは、売買契約の内容と実際の物件の状態が異なっていた場合に、売主が買主に対して負う責任のことです。

2020年の民法改正以前は「瑕疵担保責任」という名称でしたが、改正によって「契約不適合責任」に改められ、買主の権利がより明確・強化されました。具体的に買主が行使できる権利は以下の通りです。

買主が行使できる権利 内容
追完請求 不具合の修繕を求める
代金減額請求 不具合の程度に応じた値引きを求める
損害賠償請求 損害分の賠償を求める
契約解除 契約そのものをなかったことにする

これらの権利は、売主が不具合を「知らなかった」場合でも行使される可能性がある点に注意が必要です。

虚偽・記載漏れがあった場合のリスク

付帯設備表や物件状況等報告書に虚偽の記載をしたり、不具合を記載しなかったりした場合、引渡し後に買主から上記の権利を行使される可能性があります。

たとえば、以下のようなケースが典型的なトラブルとして挙げられます。

  • 雨漏りの事実を知っていたにもかかわらず物件状況等報告書に記載しなかった
  • 給湯器に不具合があるにもかかわらず「問題なし」と記載して引き渡した
  • 過去にシロアリ被害があったが、駆除済みを理由に記載を省いた

いずれのケースも、売主が事実を把握しながら告知しなかったと判断されれば、損害賠償や契約解除の対象になり得ます。売却後に多額の費用を請求されるリスクを避けるためにも、正確な記載が不可欠です。

「契約不適合責任の排除特約」があっても安心できない理由

不動産の売買契約では、「契約不適合責任を負わない」とする特約(免責特約)が結ばれることがあります。中古物件の売買では特に一般的な取り決めです。

しかし、この特約さえあれば何も記載しなくてよい、というわけではありません。

民法第572条では、売主が知りながら買主に告げなかった事実については、免責特約があっても売主はその責任を免れないと定めています。つまり、不具合を把握していながら意図的に記載しなかった場合、免責特約は効力を失います。

さらに重要なのは、付帯設備表や物件状況等報告書に不正確な記載がある場合、「契約の内容」自体が誤った情報に基づいて締結されたとみなされる可能性があるという点です。契約不適合責任を全面的に排除したとしても、書類の記載が不正確であれば、その排除自体が無意味になりかねません。

免責特約の効果を確実に得るためには、付帯設備表と物件状況等報告書に正確な情報を記載することが大前提となります。特約は「正直に開示した上で負うべき責任を限定するもの」であり、「隠し事をするための道具」ではないのです。

契約不適合責任の詳細についてはコチラ。
契約不適合責任は売主の最大リスク|築年数別の対策と免責特約の使い方

3. 付帯設備表の書き方・チェックリスト

付帯設備表を正しく記入するために建具の状態をチェックする売主さん

記載すべき設備の一覧

付帯設備表に記載する設備は、大きく以下のカテゴリに分けられます。不動産会社から渡される書式によって多少の違いはありますが、一般的に以下の設備が対象となります。

カテゴリ 主な対象設備
空調・換気 エアコン、換気扇、24時間換気システム、床暖房
給湯・浴室 給湯器、浴室乾燥機、追い焚き設備、シャワー
キッチン システムキッチン、食洗機、ガスコンロ・IH、レンジフード
洗面・トイレ 洗面台、温水洗浄便座、トイレ換気扇
建具・開口部 雨戸、シャッター、網戸、二重サッシ
収納 床下収納、小屋裏収納、ウォークインクローゼット
外構・その他 カーポート、門扉、インターホン、照明器具、テレビアンテナ、太陽光発電設備

「有・無・撤去」の判断基準

各設備の状態は、原則として以下の3区分で記載します。

  • :物件に設置されており、そのまま買主に引き渡す
  • :そもそも設置されていない
  • 撤去:現在は設置されているが、引渡しまでに撤去する

判断に迷いやすいのが「有」と「撤去」の区別です。エアコンや照明器具など、売主が持っていくか置いていくか迷うものについては、買主と事前に協議した上で決定し、合意した内容を正確に記載するようにしてください。

故障・不具合がある場合の書き方

設備に不具合がある場合は、「有」としながらも不具合の内容を具体的に記載することが重要です。「故障あり」という一言だけでなく、以下のような情報も合わせて記入するとより丁寧です。

  • いつ頃から不具合が生じているか
  • どのような症状か(異音がする、温度調節ができないなど)
  • 修理を試みたか、その結果はどうだったか

「多少の不具合なら書かなくていいだろう」という判断は禁物です。小さな不具合であっても、記載がなければ引渡し後のトラブルの原因になります。

記入前に必ずやること:実地確認の重要性

付帯設備表を記入する際に最も大切なのが、記憶や思い込みに頼らず、実際に物件を確認しながら記入することです。

長年住んでいると、設備の不具合に慣れてしまい「これくらい普通」と感じてしまうことがあります。しかし買主にとっては初めて知る情報です。以下の点を意識しながら、実際に各設備を操作・確認した上で記入してください。

  • エアコンは実際にスイッチを入れて冷暖房が正常に動作するか確認する
  • 給湯器はお湯が正常に出るか、追い焚き機能は動作するか確認する
  • 食洗機・浴室乾燥機など普段あまり使わない設備も動作確認を行う
  • 雨戸・シャッターは開閉がスムーズかどうか確認する
  • 床下収納や小屋裏収納は実際に開けて状態を確認する

面倒に感じるかもしれませんが、この実地確認こそが引渡し後のトラブルを防ぐ最大の対策です。確認作業は不動産会社の担当者と一緒に行うと、記載漏れや判断ミスを防ぎやすくなります。

4. 物件状況等報告書の書き方・注意点

戸建ての2階の天井から雨漏りがしている

記載が必要な主要項目

物件状況等報告書に記載すべき項目は多岐にわたります。以下の項目を中心に、該当する事実がないかを一つひとつ確認しながら記入してください。

■ 建物の状態に関する項目

項目 確認すべき内容
雨漏り 過去の雨漏り歴、現在の雨漏りの有無
シロアリ被害 過去の被害歴、駆除歴、現在の状況
木部の腐食 床・柱・梁などの腐食・劣化の有無
給排水設備 配管の詰まり・水漏れ・異臭の有無
電気設備 漏電・ブレーカーの不具合の有無

■ 土地・外構に関する項目

項目 確認すべき内容
地盤 地盤沈下・液状化・傾きの有無
擁壁 ひび割れ・傾き・排水不良の有無
境界 隣地との境界確認の状況、越境の有無
土壌汚染 有害物質の埋設・使用歴の有無

■ 周辺環境・その他

項目 確認すべき内容
騒音・振動・臭気 近隣や周辺施設からの影響の有無
嫌悪施設 墓地・工場・廃棄物処理施設などの有無
近隣トラブル 隣人とのトラブル歴の有無
心理的瑕疵 事故・事件・火災・自殺などの告知事項

「わからない」「不明」と書いてよいケース

物件状況等報告書を記入していると、「これはどう答えればいいのか」と迷う項目が出てくることがあります。そのような場合、事実として「わからない」のであれば、正直に「不明」と記載することは何ら問題ありません。

たとえば、中古物件を購入してから売却する場合、前オーナー時代の雨漏り歴などは把握できないケースがあります。そのような場合は無理に「なし」と記載せず、「不明(購入前の状況は把握していない)」などと記載するのが適切です。

ただし、知っているにもかかわらず「不明」と記載することは虚偽記載にあたります。「不明」はあくまで本当に把握できていない場合にのみ使用してください。

過去に起きた問題の書き方

「以前雨漏りがあったが、すでに修繕済みだから書かなくてもいいだろう」と考える売主の方は少なくありません。しかし、これは大きな誤解です。

過去に問題があった場合は、修繕済みであっても記載が必要です。

理由は2つあります。第一に、修繕したからといって問題が完全に解決しているとは限らないためです。第二に、過去の問題を知らずに購入した買主が後から事実を知った場合、「告知義務違反」として責任を追及される可能性があるためです。

記載する際は、以下の内容を具体的に書くと丁寧です。

  • いつ頃問題が発生したか
  • どのような状態だったか
  • どのような方法で修繕したか(業者名・修繕内容など)
  • 修繕後の現在の状態はどうか

過去の問題を正直に記載することは、売主にとって不利なことのように感じるかもしれません。しかし、開示することで買主との信頼関係が生まれ、引渡し後のトラブルを未然に防ぐことにつながります。

専門家(インスペクター)への依頼を検討すべきケース

以下のような場合は、不動産インスペクター(建物状況調査士)への調査依頼を検討する価値があります。

  • 築年数が古く、建物の状態に自信が持てない
  • 雨漏りやシロアリ被害の有無が自分では判断できない
  • 売却前にできる限りリスクを洗い出しておきたい

インスペクションを受けることで、専門家の目線から物件の状態を客観的に把握でき、物件状況等報告書をより正確に記載することができます。また、調査結果を買主に開示することで、物件への信頼性が高まり、売却がスムーズに進みやすくなるというメリットもあります。

ただし、インスペクションを受けるかどうかは慎重に判断する必要があります。

調査によって不具合が発見された場合、それは買主への告知義務が生じる事実となります。当然、発見された不具合の内容によっては売却価格にも影響が出ます。特に築年数の古い物件では、丁寧に調査すれば何らかの問題が見つかることはある意味避けられません。自ら調査を依頼することで、かえって告知すべき事項を増やす結果になる可能性もあります。

インスペクションは「受けるべきもの」と一概に言えるものではなく、物件の状態や売却状況を踏まえた上で、不動産会社の担当者とよく相談しながら判断することをおすすめします。

5. よくあるミスと失敗事例

浴室乾燥機が正常に動作するかを確認する売主さん

設備の動作確認をせずに「問題なし」と記載→引渡し後にトラブル

付帯設備表を記入する際、実際に動作確認をせずに「問題なし」と記載してしまうケースがあります。特に普段あまり使わない設備——浴室乾燥機、床暖房、食洗機など——は見落としがちです。

「壊れた記憶はないから大丈夫だろう」という思い込みで記載した結果、引渡し後に買主が使おうとしたら動かなかった、というトラブルは決して珍しくありません。この場合、付帯設備表に「問題なし」と記載されている以上、売主が修繕費用を負担しなければならない可能性があります。

面倒でも、記入前に必ず実際に各設備を操作して状態を確認することが、こうしたトラブルを防ぐ唯一の方法です。

「修繕済みだから大丈夫」と思い込んで過去の不具合を未記載

「以前雨漏りがあったけれど、きちんと修繕したから書かなくていいだろう」と判断してしまうケースも多く見られます。しかし前述の通り、過去に問題があった事実は、修繕済みであっても記載が必要です。

修繕したからといって問題が完全に解決しているとは限りません。また、買主としては「過去にそのような問題があった物件である」という事実自体を知った上で購入を判断する権利があります。引渡し後に買主が雨漏り歴を知った場合、「なぜ告知しなかったのか」と責任を追及されるリスクがあります。

「修繕済み=告知不要」という思い込みは、売主にとって非常に危険な誤解です。

免責特約を過信して書類を雑に記入→特約が意味をなさない結果に

「契約書に契約不適合責任を排除する特約を入れてもらったから、書類はそれほど丁寧に書かなくていい」と考える売主の方がいます。しかしこれは、最も避けなければならない誤解です。

前述の通り、売主が知りながら告知しなかった事実については免責特約の効力が及びません。さらに、書類の記載が不正確であれば、契約不適合責任を全面的に排除したとしても、その排除自体が無意味になりかねません。

免責特約はあくまで「正直に開示した上で負うべき責任を限定するもの」です。特約があることへの安心感が、かえって書類記載の甘さにつながり、最終的に特約の効果を自ら失わせてしまう——これが最も典型的な失敗パターンです。

6. まとめ:正直な記載が売主を守る

付帯設備表及び物件状況等報告書の記入にあたっては正直が一番であることを伝える男性ファイナンシャルプランナー

ここまで、付帯設備表と物件状況等報告書について、その役割から書き方・注意点まで詳しく解説してきました。最後に、この記事の重要なポイントを整理します。

付帯設備表と物件状況等報告書は、どちらも漏れなく・正確に記載することが大原則です。

「多少の不具合は黙っておこう」「修繕済みだから書かなくていい」「免責特約があるから大丈夫」——こうした考えが、売却後の深刻なトラブルを招く原因になります。特に免責特約については、正確な書類記載があって初めてその効力が発揮されるものであり、書類の記載が不正確であれば特約の意味がなくなってしまうことを、改めて強調しておきます。

正直な記載は、一見すると売主にとって不利なことのように感じるかもしれません。しかし実際には、事実をきちんと開示することこそが、引渡し後のトラブルから売主自身を守る最大の手段です。

記入にあたっては、以下の3点を必ず実践してください。

  • 実際に物件を確認しながら記入する(記憶や思い込みに頼らない)
  • 不具合は小さなものでも正直に記載する(過去の問題も含めて)
  • 不明な点は不動産会社の担当者に相談しながら進める

付帯設備表と物件状況等報告書への記入は、確かに手間のかかる作業です。しかしこの作業を丁寧に行うことが、売主・買主の双方にとって納得のいく不動産売却を実現する土台となります。

安心して売却を進めるために、ぜひ本記事を参考に、書類の記入に真剣に向き合っていただければと思います。

契約日当日のその他の持参物はコチラでご確認下さい。
不動産売買契約当日の流れと持参するもの|署名前に売主が必ず確認すべきこと

執筆者:松村保誠
宅建士・1級FP技能士・マンション管理士
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